災害や事故、パンデミックなど、何らかの理由で社員がオフィスに出社できなくなったら、あなたの会社はどうなるだろう?
最近では業務用のノートPCを持ち帰る人や、メールのやり取りくらいは自分の携帯でできるという人も多いから、2〜3日なら何とか仕事を回せるかもしれない。しかし、オフィスの外に出せない資料が必要になったり、決裁のための会議を開く必要に迫られたところで止まってしまう業務も少なからずあるのではないだろうか。
こうした不測の事態が起こっても、仕事を続けられる環境を整えているのがAIU損害保険(以下「AIU保険」)だ。“有事の時ほど仕事が増える”ことからBCP対策を重視しており、“業務を止めない体制作り”に注力している。
AIU保険の“備え”のポイントは、「多拠点化」と「在宅勤務制度」の2点だ。
多拠点化に関しては、データセンターを東西に分散させているほか、東京・大阪以外に沖縄や富山、長崎などの地方に複数の大規模拠点を置き、地域ごとに各業務の専門家を配置している。ある地域で災害が発生しても、別の拠点で業務を遂行できる体制を整えているというわけだ。実際に2011年3月の東日本大震災発生時には、東京勤務の一部の人員が大阪や富山に移動して対応していたという。
震災時の経験をふまえて、緊急時の対策をより強化するとともに、生産性やワークライフバランスの向上を狙って導入したのが在宅勤務制度だ。
震災発生当時、自宅からのVPN接続で仕事をこなした社員もいたが、オフィス勤務から在宅勤務への切り替えがより柔軟にできるよう、シンクライアントシステムを使おうということになったのだ。
シンクライアントの導入自体は、当時、すでに検討が進んでいた。Windows 2000のサポート終了対策を行うタイミングで、シンクライアント端末に切り替えるプロジェクトが立ち上がっていたのだ。
“営業担当者が外出先で個人情報を扱う”といった保険手続き業務の性質上、シンクライアント化を決めたポイントはセキュリティ強化の側面が大きかったが、そこに、“在宅勤務を可能にする”という目的が加わった。大震災を機にマネジメントの意識も高まり、シンクライアント化へのギアが入ったのだ。
シンクライアント化を実現するためにAIU保険が選択したのは、CitrixのXenDesktopとVMwareの仮想化技術の組み合わせだ。親会社であるAIGの米国本社でCitrixのXenAppの利用実績があったため、その情報を得つつ、外部コンサルタントにも相談して決めたという。
全国の端末が一斉にシンクライアント端末に切り替えられ、マネージャー以上の社員と、その他の必要性を認められた社員に対しては、「トークン」が配布された。USBメモリを一回り大きくしたくらいの装置で、そこに表示されるワンタイムパスワードを使って、自宅のPCや営業用のiPadなどからも、仮想デスクトップにアクセスできるようにした。
在宅勤務制度については、2011年4月下旬には検討チームが発足し、同年12月に正式導入された。その間に何度かの試験運用と社員へのアンケート調査を実施。課題を抽出して制度を詰めていったというから、非常にスピーディな展開だ。
試験運用で浮上した主な課題は、紙の資料に関することと、労務管理・パフォーマンス管理に関することだったという。
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