コンビニ元オーナーが犯罪――便利に潜む個人情報の危険性萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(1/2 ページ)

便利なサービスには個人情報が必要なことも多く、利用に細心の注意をしても被害の可能性は避けられない。いったいどうしたらその危険性を減らすことだができるのだろうか。

» 2015年06月26日 08時00分 公開
[萩原栄幸ITmedia]

 今年(2015年)の6月22日、筆者の眼に嫌な記事が飛び込んできた。

「コンビニで携帯番号入手、女性に乱暴 強姦容疑で元コンビニ経営者を逮捕 警視庁」(産経ニュース)

 概要は、コンビニの元オーナーが宅配便を依頼してきた高校生の伝票から携帯電話番号を不正に入手(氏名や住所も当然だが)し、携帯電話に連絡して相手を呼び出し、乱暴したという。しかも、どうやら同じような余罪が数件もあるという。

 筆者は、この手口を以前からセミナーなどでお伝えし、警告もしてきた。多少古くなるが、著書「名探偵ハギーの世界一やさしい情報セキュリティの本」(日科技連:2004年6月)でも紹介している(事件簿18『あるコンビニ店員の恐ろしい「妄想」』 無防備に個人情報を渡していませんか)。

 当時の記事のもとになったのは、筆者あてに届いたある女性からのメールによる相談だった(記事では相談内容を脚色して紹介している)。もう11年も前のことだが、その頃からこうした手口について筆者は危機感を持っていたものだ。

便利さが増すコンビニ(写真はイメージです。)

 現在、相当な個人情報がコンビニに流れている。振り込み用紙もその1つだろう。その昔、携帯電話(当時はガラケーしかなかったが)の料金の振り込みは、盛んにコンビニが利用されていた。今でも銀行口座などを持たない若者などを中心に、まだまだコンビニで振り込みをされる人は多いという。その他にも公共料金や、最近では急減しているDPEの引換などがある。しかも当時の振り込み用紙には、不要だと思われる携帯電話番号やその他の詳細な個人情報が印刷されていた。今ではびっくりするくらい意識の甘い環境だった。

 お気づきの人も多いだろうが、最近の振り込み用紙には不要な個人情報が極力印刷されなくなった。だが、宅配便の伝票などはどうしても送り主と送付先の氏名、住所、連絡先などを記載するしかないので、とてもやっかいだ。筆者はこの点もそのうち問題になると以前から思っていたものだ。

 しかも最近は、宅配業者が巡回する時間帯に自宅にいる人の確率が低いという(いわゆる再配達率が2割近くある)。その一方、ネット通販の利用増加が著しく、全体として再配達率が上昇している。国土交通省は「宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会」を開催し、交通渋滞の要因にもなり得るこの事象を軽減する方策を考え始めたくらいだ。NHKなどのマスコミは、ローソンと佐川急便が提携してコンビニでも受け取れる新サービスを開始したと大きく取り上げた。再配達率を限りなくゼロに近づけることで、宅配業者にとっても、コンビニにとっても“Win-Win”の関係を構築できるということだ(ヤマト運輸や郵便局なども既に実施している)。

 現在では主にマンションに設置された宅配ボックスやコンビニでの受け取り、配達時間の延長、1回目の受け取りでポイントの加算、駅での受け取りボックスの設置、配達時間指定の細分化など、宅配サービスの改善に向けた試行錯誤が続けられている。

 こうした中で、セキュリティの専門家が「個人情報が危ないですよ」とは非常に言いにくい面もあったが、実際に前述のような事件が発生している。残念だが、「自分の身は自分で守る」ということでお伝えするしかなかった。

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