これまで「バカッター」投稿者の行為と、その影響を受ける企業や関係者の視点で解説してきたが、今回は「バカッター」の行為を正す感覚(と思われる)で投稿者の個人情報をネット上に晒す行動について考察してみたい。
今回は、「バカッター」の投稿を発見すると「正義の味方」と称して投稿者の個人情報を暴き、世間に公開して投稿に対する謝罪を求める(直接的に謝罪を求める人もいるが、間接的に世間を味方につけて謝罪を余儀なくさせてしまう場合も多いが)行為について考えてみたい。
筆者は、「正義の味方」と称して投稿者の個人情報を暴く彼らの(彼女ら?)行動を全て理解できないとは言わない。「バカッター」投稿者の多くは、世間の常識を知らない若者がほとんどを占めているので、「正義の味方」はお灸をすえるような感覚で個人情報を晒しているのではないだろうか。ただし、それは本当に正しい行為なのだろうか。むしろ、「私刑(リンチ)」に近いものではないかという気がしている。それは以下の点から感じていることだ。
現実に、筆者の手元へ「バカッター」投稿の関係者という人(メールでは「親戚」と記載されていたが、恐らく本人の親と思われる)からメールが届いた。
内容を簡単に紹介すると、中学生になる親戚の子ども(自分の子ども?)がバカッター行為をしたらしく、直ぐにネット上で氏名や学校名などの個人情報が晒されてしまったという。母親はうつ病になり、父親は会社を休んで対応策を弁護士と検討しているそうだ。学校は停学処分となり、本人は一日中泣いて自室に閉じこもりになったという。
ところがメールによれば、投稿したのは本人ではなく友人の一人であり、「悪ふざけ」で写真を撮ったらしい。その中の一人が好奇心から、「ちょっと自分の携帯を忘れたので貸して」と個人情報を晒された子どもの携帯電話を借り、そこのIDを使って投稿してしまったらしい。投稿さえしなければ、「冗談画像」で済んだはずだという。両親は学校に事実を話したが、結局は投稿した張本人への処罰は無く、(メールの時点では)ID所有者の被害者の中学生だけが「行為者」と断定され、停学になったのだという。
「バカッター」投稿の裏側が、実はこのメールにあるような状況だったとしたら、「正義の味方」と称する人たちはどう対応するのだろうか。「正義の味方」と称する人たちの行為が「私刑」に近いものと感じるのは、こうした実態があるからだ。
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