税理士なら無料、A-SaaSがマイナンバー収集・管理サービスの受付開始

税理士ならば無料で使えるマイナンバー収集・管理サービスの事前登録受け付けが始まった。

» 2015年07月15日 21時39分 公開
[岩城俊介ITmedia]

 税理士向けクラウド税務・会計・給与サービス「A-SaaS」を展開するアカウンティング・サース・ジャパンは7月15日、税理士向けに無料で展開するクラウド型マイナンバー収集+管理サービス「マイナセキュリティ」の事前登録受付を開始した。

photo マイナセキュリティ」の事前登録画面

 マイナンバーは当面、社会保障、税、災害対策の分野に限定して使われる。税分野においては税務署へ提出する多くの申告書や帳票に記載することになる。一方、全国385万社におよぶ中小企業や団体、さらに個人事業主はもともと、税や社会保障に関する書類作成を税理士や社会保険労務士に委託している実情がある。記帳入力の代行から税務申告などまで士業に「丸投げ」とする例も多い。そこへマイナンバーも管理することになるならば、士業事務所もマイナンバーの取り扱いに関する義務や責務を負う。設備や教育など対応のためのコストも別途多大にかかるため、「できれば、持ちたくない」のが本音という。

 税理士向けにクラウド税務・会計・給与サービスを展開するA-SaaSはこの課題解決のため、税理士ならば無料で利用できるマイナンバー収集・管理サービス「マイナセキュリティ」を展開する。顧問企業には税理士を介してサービスを使えるようにする仕組みによって、税理士、委託元企業それぞれのマイナンバー対策に関する課題やリスクの多くを低減できるとする点をメリットに掲げる。

 サービスは2015年8月下旬に開始予定。事前登録により、A-SaaSのクラウド給与システムを使った年末調整・法定調書作成を無料体験できる特典などを設ける。

photo 「マイナセキュリティ」のコンセプト

マイナンバー制度とは

 マイナンバー制度は、2013年5月24日に成立した「マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)」によって、複数の機関に存在する個人の情報が「同一の人の情報である」ことの確認を行うための基盤である。2016年1月に開始する。

 国民一人ひとりに固有の12ケタの番号の「マイナンバー」を割り当て、それに基づき国民の生活や収入など各自の事情に応じた行政サービスの迅速化を図る目的で導入される。主に(当初は)、社会保障制度(年金、医療、介護、福祉、労働保険)、税制(国税、地方税)、災害対策に関する分野に使われる。2015年10月5日よりマイナンバーが付番された通知カードが国民一人ひとりに届き、個々の申請手続きによって個人番号カードが交付される。

 事務を担当する機関は行政機関や自治体などだが、社会保障や税に関する届出に必要な従業員のマイナンバー収集や以後の管理は個々の民間企業、ないしその委託先が担う。例えば、税分野では、税務当局へ申告する各企業が番号の収集と管理を行い、給与所得の源泉徴収票などさまざまな帳票へ記載する対応が必要となる。基本的には、すべての民間企業や団体が当てはまるものとなる。

 マイナンバーを含めた個人情報は「特定個人情報」と定義され、取り扱いが厳格に規定される。これまでの個人情報保護法では対象外(5000件以下)の事業者であっても、それを1件でも取り扱うならばマイナンバー法における「個人番号関係事務実施者」となり、規制の対象になる。罰則も個人情報保護法より種類が多く、法定刑も重くなっている。一例として、正当な理由なく業務で取り扱う特定個人情報を提供した場合「4年以下の懲役または200万円以下の罰金」が科せられることがある。

 マイナンバーの取り扱いにおいて民間企業は「必要な範囲を超えて扱わない」「情報漏えいしないよう安全に管理する」「取り扱う従業者を教育、監督する」「委託先を監督する」などの義務や責務を負う。具体的にはマイナンバー制度の開始までに、マイナンバーの収集において厳格な本人確認を行うシステム、情報漏えい防止のための安全管理処置を講じること、そのための社内ITシステム改修やポリシーの制定、改訂を行っていく必要がある。データ保護の方法については、例えば「データの暗号化」や「パスワード保護」、そして「暗号鍵やパスワードの適切な管理」を行うようガイドラインで示されている。

 マイナンバー関連業務をアウトソースするにも、その委託先(その委託先の委託先も含めて)が適切かつ安全に管理、運用しているかを自社が監督する義務がある。漏えい事故が発生すれば、自社も罰則の対象になる。アウトソーシングサービスの選定も、マイナンバー法施行に対応した安全、確実な対応と対策手段を設けている事業者かを見極める必要がある。


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