マイナンバー2015

マイナンバー「個人番号カード」、職場で一括申請可能に

政府が「個人番号カード」の追加交付方法を追加。市区町村の窓口へ個人が出向く方法に加え、職場で一括申請できる方法も追加する。

» 2015年08月21日 15時51分 公開
[岩城俊介ITmedia]

 政府は8月20日、マイナンバー制度における個人番号カードの交付方式を決めた。企業などが従業員のカードを一括で申請する新方式も導入し、家族分も職場でカードを受け取れるようにする。21日付の全国紙が伝えた。

 2016年1月に開始するマイナンバー制度。マイナンバー(個人番号)は日本に住民票のある人全員に付番され、10月より順次、番号と氏名・住所・性別・生年月日が記載された「通知カード」が簡易書留で住民票住所へ世帯分が届く。2016年1月以降、同封される申請書で市区町村に自身で申請すると顔写真入りで身分証明に使えるICチップ入りカード「個人番号カード」の交付を受けられる。

 番号通知のための通知カードに対し、個人番号カードは身分証明にも使える。個人がさまざまな行政手続きをする際に添付書類を省略できるなど、制度の目的である「国民の利便性の向上」を実現するための個人証明カードとしての利用シーンが見込まれている。

photo マイナンバー通知カードと個人番号カード

 個人番号カードは、これまで「市区町村へ出向き、個人手続きで」の方法が示されていたが、市町村の窓口の混乱や事務負担を考慮し、「職場(や学校など)での一括申請を受け付ける」方式も追加する。

 個人(従業員)は窓口へ出向く手間が減る。企業は一括申請業務の追加で負担こそ増えるが、メリットも大きい。企業は年末調整や扶養控除申告など税や社会保障関連の帳票へ記載するため、従業員とその扶養家族、個人事業主などのマイナンバーをすべて収集する必要がある。この収集業務に遅れや不備といった混乱が危惧されている。制度は1月開始だが、マイナンバーの記載が必要になる時期が帳票によってまちまちな事情もある。

 例えば、多くの会社員が対象になる「年末調整(給与所得の源泉徴収票)」へは来年2016年の年末までに収集できていればよいが、2016年1月1日以降に退職する従業員にはマイナンバーを記載した「退職所得の源泉徴収票」がすぐ(退職日から1カ月以内)に必要になる。従業員制度対応において企業側が一括して収集してしまうことを対応フローに含めてしまえば、通知カードの紛失や収集漏れといったリスクを低減できるといえる。


マイナンバー制度とは

 マイナンバー制度は、2013年5月24日に成立した「マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)」によって、複数の機関に存在する個人の情報が「同一の人の情報である」ことの確認を行うための基盤である。2016年1月に開始する。

 国民一人ひとりに固有の12ケタの番号の「マイナンバー」を割り当て、それに基づき国民の生活や収入など各自の事情に応じた行政サービスの迅速化を図る目的で導入される。主に(当初は)、社会保障制度(年金、医療、介護、福祉、労働保険)、税制(国税、地方税)、災害対策に関する分野に使われる。2015年10月5日よりマイナンバーが付番された通知カードが国民一人ひとりに届き、個々の申請手続きによって個人番号カードが交付される。

 事務を担当する機関は行政機関や自治体などだが、社会保障や税に関する届出に必要な従業員のマイナンバー収集や以後の管理は個々の民間企業、ないしその委託先が担う。例えば、税分野では、税務当局へ申告する各企業が番号の収集と管理を行い、給与所得の源泉徴収票などさまざまな帳票へ記載する対応が必要となる。基本的には、すべての民間企業や団体が当てはまるものとなる。

 マイナンバーを含めた個人情報は「特定個人情報」と定義され、取り扱いが厳格に規定される。これまでの個人情報保護法では対象外(5000件以下)の事業者であっても、それを1件でも取り扱うならばマイナンバー法における「個人番号関係事務実施者」となり、規制の対象になる。罰則も個人情報保護法より種類が多く、法定刑も重くなっている。一例として、正当な理由なく業務で取り扱う特定個人情報を提供した場合「4年以下の懲役または200万円以下の罰金」が科せられることがある。

 マイナンバーの取り扱いにおいて民間企業は「必要な範囲を超えて扱わない」「情報漏えいしないよう安全に管理する」「取り扱う従業者を教育、監督する」「委託先を監督する」などの義務や責務を負う。具体的にはマイナンバー制度の開始までに、マイナンバーの収集において厳格な本人確認を行うシステム、情報漏えい防止のための安全管理処置を講じること、そのための社内ITシステム改修やポリシーの制定、改訂を行っていく必要がある。データ保護の方法については、例えば「データの暗号化」や「パスワード保護」、そして「暗号鍵やパスワードの適切な管理」を行うようガイドラインで示されている。

 マイナンバー関連業務をアウトソースするにも、その委託先(その委託先の委託先も含めて)が適切かつ安全に管理、運用しているかを自社が監督する義務がある。漏えい事故が発生すれば、自社も罰則の対象になる。アウトソーシングサービスの選定も、マイナンバー法施行に対応した安全、確実な対応と対策手段を設けている事業者かを見極める必要がある。


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