この「利便性vs安全性」という二律背反を徐々に解決している例がモータリゼーションだ。日本全国を網の目のようにつなげる高速道路網が整備され、人や物を遠くに速く届けることができる。特に日本の物流網などはその典型で、日本の隅々に小さなダンボール1個を安定的かつ低コストで輸送する能力は世界有数だろう。さらに、国道や県道などの生活道路も整備されている。JRや私鉄、地下鉄が整備されている首都圏や大都市近郊を除く郊外では、自動車と道路自体が生活のために欠かすことができない社会インフラとなっている。余談だが筆者も約100キロの距離を高速バスで通勤しているので、毎日この技術革新の恩恵を享受している。
その反面、総重量1〜2トンかそれ以上ある金属でできた物体の自動車が高速で移動する。歩行者や自転車、バイクなどと同じ道路を行き交う状況では、どうしても交通事故の死者が一定の割合で発生することは避けられない。
日本で史上最悪の交通事故死者は1970年の1万6765人だった。この当時「交通戦争」などという言葉が出るくらいの状況で、「サイバー戦争」という表現が使われる現在の情報セキュリティの状況によく似ている。
しかし、それから40年以上経過した2014年には4113人まで減少した。しかも、2000年以降は14年連続で減少している。自動車メーカーの安全技術の進歩、公的機関や個人一人ひとりの努力や対策が根付いてきた結果だと思われる。
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