チームを導く「大方針」は、ビジョンとゴールの“二刀流”でプロマネ1年生の教科書(1/2 ページ)

プロジェクトに関わるメンバーは多様性に富んでいるのが一般的です。異なる個性のメンバーを同じ目標に向かわせ、仕事に集中させていくのがプロマネの仕事です。そのためにはまず、プロマネが2つの“方向性”を示さなければいけません。

» 2015年09月17日 08時00分 公開
[岩淺こまきITmedia]

連載:プロマネ1年生の教科書

 現代のプロマネは、昔よりも難しいといわれています。多様な人材や混沌とした状況に苦しみ、「自分は向かないんだ」と自信を失うこともあるでしょう。この連載は、プロマネになりたての人や、役職に就いたが“やることが山積みで、関係者の間で日々翻弄されている”人が、限られた権限やリソースの中で「ヒューマン/ビジネススキル」を使ってチームをよい状態へ導くことをテーマに、さまざまなスキルや活用法をご紹介します。

 優れたプロマネが使いこなす“7つのスキル”を紹介する本連載。今回から数回にわたって2つ目のスキル、「チームをまとめるスキル」を紹介していきます。

 プロジェクトのメンバーは、多様な人材で構成されています。年齢も性別も、働いてきたバックグラウンドも育ってきた環境も、大切にしている価値観もさまざまです。「人はみな違う」のは当たり前のことですが、個性もさまざまな人たちが皆、同じ目標に向かって進めるようにするのは、言うほど簡単なことではありません。

 また、プロマネだけがプロジェクトやチームの進むべき道を理解していても、メンバーは迷ってしまうでしょう。プロジェクトをうまく進めるには、チームの“かじ取り力”が必要となるのです。

問われるプロマネの「かじ取り力」

 一言でチームの“かじ取り”と言っても、やるべきことは大きく2つに分かれます。

  1. 北極星を示す……目的を共有し、チームの方向性を示す
  2. 日々の“かじ”をとる……日々の業務を通じて軌道修正を行う

 まずはチームにとっての“北極星”を示すこと。言いかえれば「ブレない目的を共有し、チームの方向性を示す」ことになります。これだけ言うと“基本的なことだね”と思われるかもしれません。まったくその通りですが、示す方向性は2種類必要であることはあまり知られていないように思います。両方を共有できているチームは、そう多くないと言っていいでしょう。

photo プロジェクトをうまく進めるにはまず、チームにとってブレない“北極星”を示すことが重要です

1.プロジェクトのゴール

 1つ目はプロジェクトに対する方向性です。クライアントがなぜ、今回のプロジェクトを実現したいかを明示します。例えば“●●を実現したい”などが代表的な目的として挙がります。これはプロジェクト憲章やRFP(提案依頼書)の中に書かれているのが一般的です。ここでは「プロジェクトのゴール」と表現します。

 こちらは割とイメージがつきやすいでしょう。プロジェクト開始時には、やりたいことや要件が明らかになっていることが多いからです。例えば「Aを実現するため、現システムの見直しを図る」というゴールがあれば、そのための要件として「システム再起動時に2秒以内でBが完了する」など、満たすべき内容が定量的・定性的に示され、何をすればよいか明確になっているのが一般的です。

2.チームのビジョン

 見落としがちなのが“チームそのもの”に対する方向性です。「プロジェクトのゴール」だけではチームは機能しません。各メンバーの目標や、チームとしての成長に意識が向かないからです。この状態では“チーム”とはいえません。ただの個人の寄せ集めになってしまいます。そのため、対クライアント向けのゴールと別に、チームの成長(メンバーの成長を含む)に注目した方向性を示すことが必要になるのです。

 具体的には「自分達が何のために集まり、それを成し遂げるためにどう行動していくか」といった目標と行動指針を示します。この目標と行動指針は全てのメンバーにとってワクワクするような、魅力的なものが良いでしょう。メンバーとしては、チームの成長に自身の行動が貢献していると理解することで、能動的に活動しやすくなります。これを「チームのビジョン」と表現します。

 チームにとってブレない目標、“北極星”なしにメンバーは同じ方向を向けません。そして各人の“貢献感”がなければ、能動的に同じ方向を向いてもらうのは難しいことです。プロマネから「プロジェクトのゴール」と「チームのビジョン」の両方をメンバーに示し、チーム全員で共有することが、チームをまとめるための第一歩といえるでしょう。それでは、ここからは方向性を具体化し、チーム全体で共有していく方法についてお話しします。

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