東京五輪のセキュリティ、人手不足を“スマホ”が救う?警備員とボランティアが連携(1/3 ページ)

都内で開催された市民参加型のスポーツイベントで、ALSOKやNECが実証実験を実施。先端技術を使った新たなセキュリティ施策を検証した。オリンピックでの実用化を目指すため、こうした実証実験を重ねることに大きな意味があるという。

» 2015年11月19日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 2020年に開催される東京オリンピック。国立競技場の取り壊しが終わるなど、自治体や企業などが施設の整備を進めているが、開催までに間に合うのか、建設業従事者の不足を心配する声が上がっている。

 同じように人手不足の悩みを抱えているのが、大会時のセキュリティだ。テロの脅威などもあり、オリンピックの開催にあたって、五輪組織委員会は総勢5万850人の警備体制を組むと発表している。警視庁などの警察官2万1000人のほか、民間の警備員1万4000人、ボランティア9000人などを動員する計画という(参考資料)。

 しかし少子高齢化が進む中、これだけの人員を確保するのに苦労しているのが現状だ。ボランティアも含め、警備経験のない人を多く採用することも予想される。

 厳しい状況の中、どのようにセキュリティの“質”を担保するか。その答えは、綜合警備保障(ALSOK)がスポーツイベント「ザ・コーポレートゲームズ 東京 2015 アジア パシフィック」で行った実証実験の中にあるかもしれない。その内容は、警備員とボランティアスタッフが連携し、不審物や急病人の介護を行うというもの。今までバラバラに動くことが多かったという両者をつなぐカギとなるのは「スマートフォン」だ。

photo 11月14日〜15日に行われた「ザ・コーポレートゲームズ 東京 2015 アジア パシフィック」の様子。レセプションパーティーなどもあり、お祭り要素が強い本イベントだが、その裏でオリンピックを見据えたさまざまな実験が行われていた(出典:コーポレートゲームズ 東京)

トランシーバーアプリでボランティアスタッフと連携

 コーポレートゲームズは市民参加型のスポーツイベントで、1980年代にイギリスで創設して以来、世界30カ国60都市で開催されている。2014年に初めて日本でも開催され、約6000人が参加。今回も約1万人が参加し、サッカーやテニス、ゴルフ、マラソンなど全13種目に分かれてスポーツを楽しんだ。

 東京マラソンなどの大規模なイベントでは、警察のほか、ALSOKのような民間の警備員やボランティアが配備されることが一般的だ。彼らの役割分担ははっきりしているものの、指揮系統が異なるために連携して動くことはこれまでほとんどなかったそうだ。その点にALSOKは問題を感じていたという。

 「競技場など広い場所の巡回を警備員だけでカバーするのは難しいケースもあります。ボランティアの方にもわれわれの“目”として協力していただきたい。ボランティアの方が異変を見つけ、われわれや警察が判断して処理をする。うまく連携する方法を模索していく中で、スマートフォンをトランシーバーとして使う方法を採用しました」(ALSOK担当者)

photo 警備本部の様子。人が倒れている様子をウェアラブルカメラから送られた映像で確認し、医師が指示を出すというデモが行われた
photo 本部には日本救護救急財団の救命士も待機。急病人を発見し次第、すぐにかけつける体制を敷いていた

 敷地内を巡回するボランティアスタッフのスマートフォンにIPトランシーバーのアプリを導入し、カメラやGPSを使いながら警備本部と連絡を取ることで、スムーズな情報共有や素早い対応が可能になる。

 例えばボランティアが敷地内で不審物を見つけた場合、アプリを立ち上げ、スマートフォンのカメラで撮影しながら、ALSOKのスタッフがいる警備本部に連絡する。本部ではカメラの映像を確認しつつ対応を指示(持ち主が周囲にいないか確認するなど)、スマホのGPS機能でボランティアの位置情報を確認し、近くにいる警備員を向かわせる――といった具合だ。

 イベントでは、警備本部に医者や日本救護救急財団の救命士も待機。急病人を見つけた場合はスマートフォンからの映像を医者が確認して診断し、救命士を向かわせるといった態勢も準備。こうした一連のフローがスムーズに行えるかどうかを実験していた。

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