日本オラクルが独自戦略「POCO」を打ち出した理由Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2015年12月14日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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POCOをクラウドエコシステムのキャッチフレーズに

 日本オラクルがPOCOと銘打ったクラウド事業戦略は、こうしたグローバルな展開を日本流に推進しようというものだ。

 同社はこのPOCOというキャッチフレーズを、2016年度の事業戦略について説明した6月30日の会見で初披露した。その会見では、杉原氏がPOCO戦略として、かねて打ち出していた「2020年までに国内でクラウドシェアトップ」に向け、「SaaS・PaaS・IaaS事業の拡大」「システム事業の拡大」「エンタープライズ営業の強化」「地域ビジネス成長に向けた支社体制の再編と拡充」といった4点に注力する姿勢を示した(関連記事)。

 この内容からすると、POCOは多分に社内向けのキャッチフレーズとも見て取れる。実はこれには理由がある。POCOの発案は杉原氏によるものだが、もともと同氏がPOCOを発案した背景には、新年度に入る際に米国本社のラリー・エリソン最高技術責任者(CTO)やマーク・ハード共同CEOから「日本オラクルを全く新しい会社に作り替えてほしい」との要請があったからだ。

 だが、一方で杉原氏は6月の会見でも今回のイベントの講演でも、同じようにこう語っている。

基調講演を行う日本オラクルの杉原博茂社長兼CEO

 「ポコという愛嬌のある言葉をキャッチフレーズにしたのは、これまで敷居の高かったITを誰でも使っていただけるようにしたいという強い想いがあるからだ。その意味である“クラウドのちから”を解明し提案していくのがわれわれの使命だ」。そのうえで、同氏は今回の講演で「POCOブームを……」と冒頭の発言を続けたのである。

 こうしたことから、杉原氏がPOCOを社内向けもさることながら、ユーザーやパートナー企業とのエコシステムにおけるキャッチフレーズにしたいと考えているのは明らかだ。それを象徴するように、日本オラクルは7月から9月にかけてオラクルクラウドの活用事例をパートナー企業から募集した「第1回 POCOコンテスト」を実施し、今回のイベントで受賞者を発表した。

 杉原氏によると、「オラクルクラウドを使ってこんな良いことができた、もしくは、そんな使い方があったのかという実例を募集した」という。その結果、11社による13種類のソリューションが受賞。同氏が講演でその一つひとつを丁寧に紹介していたのが印象的だった。受賞したソリューションについては動画形式にまとめてYouTubeで一般公開するとしている。

 クラウド事業はサービスの“商品力”もさることながら、ユーザーやパートナー企業とのエコシステムも競争力の非常に重要な要素だ。オラクルがクラウド事業で競合するAmazon Web Services(AWS)やマイクロソフト、IBMなどもエコシステムの拡充にはこぞって注力している。POCOをキャッチフレーズとしたオラクルが、果たしてどれだけエコシステムを広げられるか、注目しておきたい。

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