第13回 “根が深い”旧システムからDocker環境への移行をどうするか古賀政純の「攻めのITのためのDocker塾」(2/4 ページ)

» 2016年01月06日 07時30分 公開

 1番目の方法は、既存の物理サーバ基盤をそのまま利用するので、あまり問題が起こらないように思えます。しかし、ソフトウェアのバージョンアップには限界があります。対応しているハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって、ベンダーのサポート可否があり、古いサーバ環境では、新しいソフトウェアがサポートされないか、全く稼働できない可能性があるのです。

 また、業務システムで利用されるオープンソースソフトウェアの組み合わせの整合性も考慮する必要があり、バージョンアップによる影響を多面的に検討しなければなりません。さらに、現在の物理サーバ基盤をそのまま使うため、電力消費の大きい古いサーバ基盤の場合は、近年、多くの日本企業が積極的に取り組んでいる電力コストの低減施策などに貢献できないといった問題もあります。

OSのバージョンアップで延命

 2番目の方法は、新しい物理サーバ基盤を購入しています。より省電力タイプで、高密度実装されているものを選択したり、CPU性能やメモリ容量を大幅に強化したものを採用したりすることで、処理能力を増強する方法です。しかし、新しいソフトウェアスタックをゼロベースで導入することが多く、既存の内製ソフトやスクリプトなどがそのまま利用できない場合が少なくありません。内製ソフトやスクリプトなどを移植するのか、全く新しいアプリケーション環境を構築するのか、判断が必要になります。

新しい物理サーバ基盤を導入

 3番目の方法では、ハイパーバイザ型の仮想化システムを導入することにより、物理環境を集約し、旧サーバ資産を捨てることで、スペースと電力問題を一気に解決できます。物理サーバ基盤から仮想化基盤への移行を行うP2V(Physical to Virtual)ツールを使うことで、ある程度は旧物理サーバ資産をそのまま仮想化基盤に移行できます。

 この仮想化基盤ソフトウェアを導入する方法は、人事や財務、給与計算システムなどの一般的な事務作業に関わる業務アプリケーションサーバなどを仮想化基盤に移行できます。しかし、研究部門などでの科学技術計算(HPC:High Performance Computing)やHadoop/Sparkといったビッグデータ解析基盤の本番環境は、性能面の観点から仮想化基盤に移行できないことも多いため、ワークロードに応じて仮想化基盤への適用範囲を考慮する必要があります。

既存の資産を仮想化基盤に移植

 4番目の方法は、物理サーバ資産を全て投げ出し、全てのIT資産を他社が提供するパブリッククラウド基盤上に移行することで、データセンター維持のための費用やサーバの固定資産を大幅に減らし、コストを削減する方法です。しかし、製造業や国の研究・開発部門では研究成果や新製品の設計図データなどの流出を懸念する声が根強く、前回のConvoyの記事でも紹介したように、オンプレミスとパブリックを併用するハイブリッド型のクラウド基盤への移行がほとんどです。

 これらの1から4番目の方法は、どれが良い、悪いというわけではなく、利用部門の状況や企業の方針、取り扱うデータの種類や機密性の度合いに応じて良し悪しが異なります。

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