マイナンバー収集「先送り」「様子見」のワナ税理士目線で提案する「中小企業のマイナンバー対策」(2/3 ページ)

» 2016年01月13日 08時00分 公開

従業員などのマイナンバーが必要となるのはいつからなのか?

 確かに、従業員から収集したマイナンバーを実際に税の分野で利用することになるのは、従業員の退職がなければ、2016年の年末調整業務で源泉徴収票や給与支払報告書を作成するときになります。そう考えて、従業員などのマイナンバーも「2016年の11月くらいまでに集めれば良いじゃないか」と様子見する気持ちも分かりますが、今から1年もたつと、必ずマイナンバーの通知カードを失くす従業員や扶養親族が出てきて、収集が難しくなることは間違いありません。

 また、従業員の出入りが多い企業では、2016年1月以降に従業員が退職する場合には、退職関連の手続きで退職する従業員などのマイナンバーが必要になりますので、その時点でマイナンバーを管理できる体制ができていなければいけないことになります。

従業員が退職した場合 マイナンバーが必要となる手続き

 では2016年1月以降、従業員などが退職した場合はどのような手続きでマイナンバーが必要になるのでしょうか。次の表は、2016年の中途で退職する従業員などに関わる手続きでマイナンバーの記載が必要となる書類を整理したものです。

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 従業員の退職時にはこのほかに、退職までの給与所得についての源泉徴収票、退職手当などがある場合は退職所得の源泉徴収票を本人に交付しなければなりません。しかし、前回取り上げた通り、本人交付の源泉徴収票にはマイナンバーの記載が不要となったため、従業員の退職時にすぐ、マイナンバーを記載して作成し、提出しなければならないのは「雇用保険被保険者資格喪失届」となります。

 この「雇用保険被保険者資格喪失届」は、退職する従業員本人のマイナンバーを記載すればいい書類ですが、従業員が退職する以前にマイナンバーを取得していない場合は、退職手続きを行うなかで本人にマイナンバーの提供を依頼し、取得することになります。

 このとき気をつけなければならないのは、退職する従業員が給与支払報告書の提出要件を満たしている場合は、本人に加え、扶養親族のマイナンバーも必要になるという点です。この給与支払報告書の作成・提出は、2017年に行えばいいのですが、2017年の書類作成時に退職者に連絡してマイナンバーの提供を求めても、スムーズにいかない可能性もあります。そのため、本人と扶養親族のマイナンバーは、退職する時点で取得しておきたいものです。

 退職者が出ても慌てずに済むように、最低限の準備としてまずは次のような従業員への案内を徹底しましょう。

  1. 従業員にマイナンバーの利用目的を示した上で、従業員本人と扶養親族のマイナンバーの提供を求める
  2. 従業員に案内するなかで、マイナンバーの提供時にマイナンバーの通知カード(個人番号カードを取得している場合は個人番号カード)が必要となること、実際に企業がマイナンバーを収集するまで通知カードは大事に保管しておくこともあわせて案内する

 その上で、マイナンバーを管理するためのシステム選びと、それに応じた安全管理措置などを検討し、マイナンバーの収集に向けた準備を開始することが大事です。

 なお、新たに従業員を雇用する場合も、雇用保険の被保険者資格取得届をハローワークに提出します。この書類には雇用する従業員本人のマイナンバーが必要となりますが、できれば新たに雇用する従業員については入社時点で本人と扶養親族のマイナンバーも収集して、年末調整業務に備えておきたいものです。

 このように従業員の入退社のタイミングで本人と扶養親族のマイナンバーを収集することになるので、急な従業員の退職で慌てずに済むよう、早めにマイナンバー収集の準備に取り掛かることをお勧めします。

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