システムエンジニア教育や情報セキュリティ教育、コンプライアンス教育、内部不正対策など40年近く手掛けてきた経験からいえる、いまの新人にITリテラシーやマナーを知ってもえるためのヒントとは?
情報セキュリティの専門家・萩原栄幸(ハギー)氏によるコラムの新シリーズ「ハギーのデジタル道しるべ」です。今回から隔週で金曜日(休日を除く)にお届けします。
最近、中堅のシステム管理者や新人教育担当者などからこういう問い合せや愚痴が多くなっている。
「最近の若者はなにを考えているか分からない。基本的なPCの教育についてこられない」
「10年前なら常識と思われた基本的なPCの知識が今では二極化して、差が大きい」
筆者のコンサルティング先の企業からは、社内の教育担当者の多くが、新人全員を一定以上のスキルに育てる自信がないと思っているという話を聞く。筆者がこの世界に飛び込んだ40年近く前は、NECが日本で初めてPC(当時はマイコンと呼んでいた)を発売した時代だ。卒論ではガスクロマトグラフィの分析をミニコンで行い、今後は卓上のコンピュータの時代になると考え、担当教授の推薦を断って自分からコンピュータの世界に飛び込んだものだった。
それから世の中は何回もドラスティックに変化していった。今では「FinTech」「IoT」「マイナンバー」「SNS」という言葉が溢れる状況となっている。その結果、急激にPCがその王座からスマホへ移り、人間の中でも明らかな世代格差を生じてしまった。物心ついた時には既にスマホがあった若者にとってPCは「遺物」の存在だ。実際にそう考えていると数人の大学院生から聞いたことがある。
PCの仕組みや原理を知らないどころか、操作方法ですら満足に知らない理系の人間が多い。一方で中年以上の人々は、「パソコンは基本のき、絶対に学習すべきもの」と思っている。机にPCがあり、メールによる伝達手段や社内の通知、個人のスケジュールなどほとんどのものがPCで管理されていると考える。最近ではスマホも食い込んできたが、中年の方は社内が明らかに変化するまで気が付かない――というより気が付いていても、無視してしまう傾向にあるが。
若い人たちは、指で画面をスワイプしたり、タップしたりする行為を、何の違和感もなく幼稚園の頃から接している。そんな学生がうっかり学校の研究室にあるデスクトップPCの画面を指で触って「なぜ動かないんだ!」と慌て、「あ、そうか。これがWindows 7の旧式の24インチディスプレイなんだ……」と理解したそうだ。これは今年に入って某大学の教授から聞いた話だが、筆者は笑ってしまったものである。
若者(時には中年も含むが)は、いくら警告してもバカッター行為を繰り返す。一部の警察官は「それがどうして悪いのか本当に理解できない若者がいる」と愚痴を言っていた。「バカッターのほとんどがそもそも物事の良し悪しを分かっていない」と本音も漏らしている。
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