あなたがチームのリーダーになったら、まず、何をするでしょうか。ビジョンの策定? 部下とのコミュニケーション? いえいえ、その前にやっておくべきことがあります。
この記事は原田由美子氏のブログ「ひといくNow!人材育成の今とこれから」より転載、編集しています。
チームリーダーになると、いろいろやらなければいけないことがあります。上位方針と社内外の現状などの把握、組織目標の遂行に向けた計画や方針の立案と伝達、メンバーのケアなど、一気にやらなければならないことが増えます。
しかし、やらなければならないことが山ほどある中で、最初にやっておきたいことがあります。それは……「自分を知る」こと。
「はぁ?」と、思われるかもしれません。しかし、「自分を知る」ことは、何をおいても先にやる必要があるのです。
ここでいう「自分を知る」とは、次のようなことを指します。
私は、何が(何を)
など。
このようにお伝えすると、「自分を知る」ということに対して違和感を覚える人も多いようです。
その理由は、組織では「自分を優先すること」や「感情をあらわにすること」はタブー視される傾向があり、自分の考え方や感情は抑えることが暗黙のルールとされているからです。
しかし、感情ってそんなに抑えられるものでしょうか。職場では、顔色を見ることや空気を読むこと、人の機嫌を伺うことに、かなりのエネルギーを割いているのではないでしょうか。
ということは、自分では「抑えているつもり」でも、実は「にじみ出ちゃってる」と考えた方がすっきりします。そして、それは「価値基準」や「意思決定基準」にも影響を及ぼしています。
その価値基準や意思決定基準が分からないから、メンバーは「顔色を見ることや空気を読むことに、必要以上のエネルギーを使わざるを得ないのです。
私の場合、次のようなことがありました。
私は時間のプレッシャーに弱いため、納期が迫ってくると眉間にしわを寄せ、“誰も声を掛けるな!オーラ“をバンバン放ってしまうようです。そんな折、急ぎで相談する必要があることが起こりました。しかしメンバーから見ると、私の様子が怖すぎて声を掛けられず、相談が遅れてしまいました。それに対する私の反応は「何で今ごろ!」というものだったのです。
メンバーから見れば、声を掛けることこそが火に油を注ぐようなものではないか、と感じていたのでしょう。メンバーが取った行動は無理もないものでした。
それに気付いた私は、「自分が時間のプレッシャーに弱いこと」「表情が怖すぎるかもしれないこと」を認め、声を掛けやすい雰囲気をつくれなかったことをわびた上で、「急ぎの相談事は優先してほしい」と伝えました。
それ以来メンバーは、時間に余裕がないときは進んで手伝ってくれたり、私の表情を気にせず急ぎの相談をするようになりました。
さらに、メンバー自身の「うまくいかないこと」についても言いやすくなったようで、お互いの理解が進み、意思疎通が図りやすくなったという効果もありました。
以上の経験を通じて、「自分を知ること」は、チームをマネジメントしていく上では優先する必要があると考えるようになったのです。
また「自分を知ること」は「下から上へ(自律的に動く)」型のチームをつくっていく上で欠かせません。これについては、これから少しずつ紹介していこうと思います。
まずは、今回ご紹介した「私は何が(何を)」の問い掛けを参考に、ご自身がしっくりくるものを1つでも2つでも問い掛けてみてください。自分を知るのって、面白いですよ。
大手生命保険会社営業職、人材育成コンサルティング会社企画営業職、取締役職を経て、2006年1月にSix Stars Consultingを設立し代表に就任。現在は、クライアント企業のブランド力向上につながる研修制度構築、プログラムの企画立案や研修指導に携わっている。詳しいプロフィルはこちら。
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