こうしたプライベートクラウドの3つの形態に対し、ユーザー企業はどのような点をメリットまたはデメリットと考えているのか。ノークリサーチは調査の中から、「アプリケーションの新しい開発/運用の手法を利用できる」および「自社固有のハードウェア環境を取捨選択できる」という2つのメリットに対する回答結果(図4)を公開している。
同社の説明によると、オンプレミスプライベートクラウドは、3つの形態の中では従来のオンプレミス環境に最も近いため、後者のメリットの回答割合が高い一方、前者のメリットの回答割合が低いという結果になりやすいという。
これに対し、ハイブリッドプライベートクラウドは、前者のメリットの回答割合が最も高い。これは、このクラウド形態の本質が「クラウドで培われたシステム基盤の成果をオンプレミスに持ち込むことにある」からだ。さらに今後、ミドルウェアや開発フレームワークにも影響を与える可能性があるとしている。
そうした中で、ホステッドプライベートクラウドは上記2つの形態の中間的な回答割合を示している。だが、サーバを占有できるとはいえ、メーカー/機種の選択やシステム構成をユーザー企業が全て自由に決められるわけではない。どこまで自由度があるかはクラウド事業者によって異なってくる。「費用面との兼ね合いも含めて、今後はそうした自由度の高さが差別化要因の1つになってくる」と同社では予測している。
このホステッドプライベートクラウドについては、本連載でも「注目度高まる『持たないプライベートクラウド』」と題した2013年9月24日掲載の記事以降、折りに触れて取り上げてきた。
それは、このクラウド形態がパブリッククラウドとプライベートクラウドの“いいとこ取り”をした「アズ・ア・サービス」として浸透してきたからだ。7年前の記事に立ち返ると、オンプレミスとハイブリッドによるプライベートクラウドは、あくまで自社でのシステム構築が基本である。
とはいえ、今回ノークリサーチが調査結果でまとめたプライベートクラウドの3つの形態は、ユーザー企業にとってはパブリッククラウドと合わせて自社システムを今後どう移行していくかという選択肢になる。同社の調査では中堅・中小企業を対象としているが、図2と図3に記された内容は企業規模を問わない。ユーザー企業にとっては貴重な資料だろう。
こうしたITの仕組みにおける選択肢がある中で、それぞれの特徴を生かしながら、企業としてどのようなビジネス戦略を打ち立てていくのか、どのようにデジタルトランスフォーメーションを図っていくのか。CEOおよびCIOの経営手腕の見せどころである。
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