この8年、クラウドでIT業界はどう変わったのかWeekly Memo(1/2 ページ)

本連載も今回で400回目。連載開始から8年の間にIT業界はどう変わったのか。これまでの記事を通して振り返ってみたい。

» 2016年05月09日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]

Salesforce.comの躍進が象徴するクラウド市場の拡大

 「Weekly Memo」と題して2008年4月にスタートしたこの連載も、今回で400回目となった。そこで今回は、手前ミソながらこの8年の間にIT業界がどう変わったのか、とりわけ話題に上げた回数が多かった「クラウド」に注目し、これまでの記事から市場の変化を物語るキーパーソンの発言や筆者の見解をピックアップしてみたい。

 まず、本連載でクラウドの話題を初めて取り上げたのは、「第4のパラダイムシフトの起点―Salesforce for Google Apps」(2008年4月21日掲載)である。この記事でクラウドについて、「ITシステムはネットワークという“雲=クラウド”の中に隠蔽してブラックボックス化し、ユーザーはクラウドから接続先さえ意識することなくサービスを受ける形となり、ITシステムが“所有”するものから“利用”するものへと完全にシフトする新たなパラダイムを意味する」と説いた。

 また、「新たな合従連衡を生むクラウドコンピューティング」(2008年8月4日掲載)では、「クラウドを提供するIT企業にとっては、資金力、技術力、サービス力など、これまで以上に総合力が問われることになる。

 これまで幾多のパラダイムの変化とともに、さまざまな合従連衡が行われてきたIT業界だが、クラウド時代はかつてないほどのダイナミックな動きが巻き起こるのではないか。これから10年、IT業界は歴史上で見ても最大の正念場を迎えるような気がする」と述べた。さて、8年経過してどうか。まだまだダイナミックな動きはこれからが本番のような気がする。

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 クラウドがもたらした業界の勢力争いでは、SaaS/PaaS市場で急成長を遂げている米Salesforce.comのマーク・ベニオフCEOが2009年9月に自社イベントの講演で、「多くの企業がSAP、Oracle、Microsoftのソフトウェアを利用しているが、これら3社のビジネスモデルやテクノロジーは古いままだ。

 Salesforce.comはそんな3社の市場支配を打破して、企業に新たなイノベーションの機会を提供する」と、ソフトウェア大手3社をこき下ろした(2009年9月24日掲載「SAP、Oracle、Microsoftはもう古い―Salesforce.comベニオフCEOの講演語録)。

 ちなみに、米Gartnerによる2013年の世界ソフトウェア市場のベンダー別売上高ランキングによると、Salesforce.comは第10位(2014年4月7日掲載「ソフトウェアのベンダー別ランキングが映し出すもの」)。

 しかし、2015年9月に開いた自社イベントの講演でベニオフ氏は「1年後には世界第4位のソフトウェア企業になる」と宣言した(2015年12月7日掲載「Salesforce.comが狙う“世界第4位”とその先」)。同社の躍進ぶりがクラウド市場の拡大を物語っている。

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