クラウド時代のシステムインテグレーター(SIer)のありようについては、まだまだ課題がありそうだ。「クラウド時代のシステムインテグレーターの役割」(2010年2月22日掲載)では、複数のSIer幹部の話をもとに「クラウドサービスはこれまでオンプレミスのシステム構築をなりわいにしてきたSIerに抜本的な業態転換を迫っている。それは一言でいうならば、SIの“S”をシステムからサービスへ変えた“サービスインテグレーション”への転換だ」と記した。
ところが、「2016年のIT市場はどうなるか」(2015年12月21日掲載)で筆者は、「SIerはデジタルトランスフォーメーションの波に乗り遅れてはならない。国内IT市場は今、大型のSI案件がめじろ押しの状態だ。ただ、そうした案件の多くは、デジタルトランスフォーメーションとは関連性があまりない。従って、案件に携わっている多くのエンジニアが最新技術に乗り遅れかねない。これがひいては日本のSIerのグローバルでの競争力の低下につながらないか、危惧されるところだ」――と警鐘を鳴らした。サービスインテグレーションがデジタルトランスフォーメーションにつながると考えれば、SIerは早急の対応が必要だろう。
クラウド市場で今、最も注目を集めているホステッドプライベートクラウドサービスについては、「注目度高まる“持たないプライベートクラウド”」(2013年9月24日掲載)で初めて詳しく解説した。
「パブリッククラウドとプライベートクラウド双方の特長を併せ持つサービスへの顧客ニーズが最近、急速に高まってきている」(富士通幹部)として、この頃からNEC、富士通、インターネットイニシアティブ(2014年7月14日掲載「IIJとマイクロソフトの協業が映し出すクラウドの主戦場」、NTTコミュニケーションズ(2016年3月7日掲載「パブリックとプライベートを“いいとこ取り”したクラウド戦略の行方」などが注力し、サービス拡充を図っている。
この分野については、パブリッッククラウドサービスで先行するAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureも企業向けに対応した同様のサービスを展開しており、まさしくクラウド市場の主戦場になる可能性が高い。国産勢が存在感を発揮できるかどうか、注目されるところだ。
最後に、今回あらためて400本の記事を読み返してみて、結びのメッセージを記しておきたい。「ITビジネスに求められる発想の転換」(2011年2月28日掲載)で紹介した、米IBMのサミュエル・パルミサーノCEO(当時)が激動の時代に向けて語った言葉である。
「勝者は嵐を生き延びた者ではなく、ゲームのルールを変えた者だ」
ゲームのルールを変えるとはどういうことか。その発想の転換が、これからのITビジネスに求められているように思えてならないのは筆者だけではないだろう。ぜひ、読者の皆さんも考えてみていただきたい。
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