NECの年次カンファレンス「iEXPO KANSAI 2016」で新野社長が講演。人工知能は人間を単純労働から解放し、ポテンシャルを引き出す存在になると述べ、さまざまな導入事例を紹介した。人工知能と人間が協力することで、さまざまな社会課題を解決できるというのが、同社のスタンスだ。
人工知能(AI)は人間を単純労働から解放し、人間のポテンシャルを引き出す――。7月21日、22日に大阪で行われたNECの年次イベント、「iEXPO KANSAI 2016」の基調講演で新野隆社長はこう述べた。この2つが同社が考える、人工知能の役割(価値)だという。
同社は2015年から、AIとIoTに注力する姿勢を打ち出しており(関連記事)、イベント直前の7月19日に、人工知能の技術ブランド「NEC the WISE」を策定している。“賢者たち”という意味を持つこの言葉は、同社のAI関連技術群を指しており、ブランド化したのは「数々の技術はあるものの、今まで分かりやすい形でアピールできていなかった」(新野社長)ためだ。
複雑かつ高度化する社会課題を、人間とAIが協調して解決していくにはどうするか。講演では、新野社長がブラジルの国際空港で導入された顔照合システムや、ニュージーランドのウェリントン市におけるスマートシティ実証実験、カゴメのトマト農園で使われている、生育計画から収穫量の予測まで全てを行うシミュレーションシステムなどの、代表的な事例を紹介した。
同社は数々の技術の中でも、画像解析の技術を世界一とうたっているが、カゴメの事例についても、NECならではの技術が生きていると新野社長は強調する。
「トマトの露地栽培というのは、天候など不確定な要素が多く、通常は人工知能での予測に向きません。仮に予測ができたとしても、数年分の膨大なデータが必要になります。しかし、NECの場合は過去データ以外の情報も活用することで、初年度から高精度な予測を実現できました。ポルトガルやオーストラリアで、新たな農園候補の場所を探す際にも役に立っています」(新野社長)
講演が行われた大阪においても、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で顔認証技術を生かした入場システムが稼働している。「年間パスポート」の利用者が“顔パス”で入場できる仕組みで、待ち時間を減らすともに30%の経費削減を実現したという。USJでは、他にも電子マネーやスマートフォンによるアトラクションの予約システムなども導入しており、新技術に対して意欲的な投資を行っている。
近年、大阪や京都を中心とする、近畿地方全体で訪日外国人観光客が増えており、セキュリティ対策や観光客の利便性向上を目的とした、ITシステムの需要が高まっているそうだ。
「大阪ではユニバーサル・スタジオ・ジャパンの他にも、大阪市交通局がクラウド型のビデオ通訳システムを導入しています。今後、同市の地下道に設置されている500台あまりの監視カメラの活用に向けて、当社から時空間データ横断プロファイリングシステムによる監視などもご紹介しています。こうした大阪市の積極的な活動は、市長の吉村氏がITを街づくりに生かそうと、さまざまな取り組みを行っているのが一因です」(同社執行役員 営業統括ユニット西日本担当 鈴木幸司氏)
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