IoTでゲリラ豪雨対策――富士通が「下水道氾濫検知ソリューション」を発売

富士通は、ゲリラ豪雨などによる下水道氾濫の被害軽減を目的とした「下水道氾濫検知ソリューション」を発表した。マンホールに直接センサを搭載し、自然エネルギーを電力に変換する熱電変換ユニットで電力を供給する。

» 2016年08月16日 07時00分 公開
[ITmedia]

 富士通は8月15日、下水道事業者向けにゲリラ豪雨対策に活用できる「下水道氾濫検知ソリューション」を発売した。

 このソリューションでは、水位情報を収集するセンサを下水道のマンホールに設置し、無線通信で定期的に(注1)の水位情報をクラウド上に収集・蓄積する。

Photo マンホール蓋への装置搭載イメージ(富士通提供)

 収集した水位情報は水位モニタリング用アプリケーションにて地図上にグラフ表示し、下水道管路内の水位情報をリアルタイムに可視化できる。これにより、自治体の防災担当者は、Webブラウザからインターネット経由で各マンホールの水位情報を確認し、有事の際には、地域住民に対して即座に氾濫情報の通知や被害抑制に向けた事前対応を行うことができると説明している。また蓄積した水位情報は、排水計画の検証や管路更新計画に役立てることもできるという。

注1 基本設定は、雨天時5分ごと、晴天時1時間ごと

 水位情報を収集するセンサとセンサノードへの電力供給は、マンホール蓋の温度差より得られるエネルギーを電力に変換する熱電変換ユニットから行う。バッテリのみでセンサを駆動する方式と比較すると、電池交換周期が10カ月から5年に延長(注2)され、運用を大幅に効率化できるとしている。この熱電変換ユニットは、富士通九州ネットワークテクノロジーズが開発し、小型化・高効率化によって、国内で初めてマンホール蓋への直接搭載が可能となったという。

注2 富士通研究所が福島県郡山市で実証した結果をもとに試算

 また、水位センサによって収集される水位情報は、マンホール周辺に設置されたゲートウェイを経由してクラウドに転送されるため、電源や光ファイバーケーブルの敷設工事が不要となり、既設のマンホールから測定したい箇所を柔軟に選択でき、導入コストの抑制が見込めるとしている。

Photo 下水道氾濫検知ソリューションのシステム構成(富士通提供)

 背景には、近年、局所的な豪雨の多発や都市化の進展などによる下水道氾濫の被害が甚大化する傾向にあり、浸水対策として下水道管路の増改築や迅速な水位情報の収集が求められていることがある。2015年度に改正・施行された水防法では、地下街などの周辺地域に対して下水道施設の水位情報を周知する制度が創設された。しかし、従来の方式では、光ファイバーケーブルの設置やバッテリー搭載型水位センサの電池交換などによって多大な導入・メンテナンスコストが掛かるという課題があった。

 下水道氾濫検知ソリューションの販売価格は個別見積で、オンプレミスでのサービスは2017年度の提供を予定する。

 本ソリューションのようなIoTの社会インフラへの適用は、導入やメンテナンスに関する費用をいかに抑えていくかが課題の一つ。この分野では複数の業種の企業が研究開発を進めており、今後ますます競争が激しくなっていくとみられる。

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