チャットbotを加速するLINEの新API、そのポイントは?

LINEが、外部のサービスからLINEユーザーに通知を送れる「LINE Notify」を無料で提供する。また、Messaging APIを正式にリリース。さまざまなチャットbotを自由に開発できるようになる。

» 2016年09月30日 07時00分 公開
[園部修ITmedia]

 LINEは9月29日、開発者向けのイベント「LINE DEVELOPER DAY 2016」を開催し、無料でLINEへの通知ができる「LINE Notify」や、LINE上のチャットbotの機能や使いやすさを高める新たなMessaging APIを発表した。

WebサービスなどからLINEに通知が送れる「LINE Notify」

 LINE Notifyは、外部のWebサービスからの通知をLINEユーザーに送れるAPIゲートウェイ。グループ宛ての通知なども可能で、サービス側で実装をすれば簡単に連携できるという。APIは、OAuth2で認証してアクセストークンを取得し、それを利用してHTTPSでの通信を構築する。OAuth2認証が手間な場合は、パーソナルアクセストークンも利用できるとのこと。シェルスクリプトに埋め込んだりして使える。

 自動連携ツールの「IFTTT」(イフト)にも対応したため、特定の言葉を含んだメールの着信をLINEで通知したり、特定の条件をトリガーにLINEにメッセージを送ったりといったことも可能になった。

 また開発者向けに、ソフトウェアの共有・管理ツール「GitHub」やサーバの管理・監視ツール「Mackerel」との連携も開始。LINE Notifyもしくは各サービス上で設定をすることで、通知をLINEで受け取れるようになる。

LINE Notify LINE Notify

 利用にはサービスの登録や開発が必要だが、料金は無料。なお、広告および販売促進などの目的での利用は規約で禁止されている。

LINE Notify LINE Notifyは無料で利用できる

リッチなUIを実現する新しいMessaging API

 チャットbotのアクションを、よりユーザーに分かりやすい形で提示したり、複数人のユーザーの会話の中にチャットbotを加えたりできる、新しいMessaging APIの提供も始まる。従来、Messaging APIが利用できるのは、LINEビジネスコネクト導入企業とパートナーに限定されていたが、新しいMessaging APIの公開に合わせ、LINE公式アカウントやLINE@アカウントでも利用可能になる。

 料金は、LINE公式アカウントではメッセージの通数に応じた従量課金、LINE@アカウントではプランごとに設定されたオプション契約に応じた課金となる。なお、4月から提供していた「BOT API Trial」の代わりに、友達が50人までに限定されるが、その他の機能は自由に試せるDeveloper Trial機能を提供するので、個人で何か作ってみる、といった場合には無料で試せる。

 新しく用意されるMessaging APIでは、ユーザーに確認を求め、シンプルに「はい」か「いいえ」などの2つのアクションを選んでもらえる「Confirm Type」、画像やテキストなど、複数のアクションボタンを利用できる「Button Type」、さらにButton Typeの吹き出しを複数横に並べ、左右にスクロールして情報が出せる「Carousel Type」の3つのメッセージ形式が使えるようになる。チャットbotから送られるメッセージを、ユーザーに分かりやすいインタフェースで提供できるので、使い勝手のよいサービスを作れる。

Messaging API 新しいMessaging APIはCarousel(カルーセル) Type、Confirm(コンファーム) Type、Button(ボタン) Typeを新たに提供

 デモでは、友達との会話の中でチャットbotを呼び出し、レストランのレコメンドをしてもらって、そのまま予約する、という「食べログ」botのサービスを紹介していた。

Messaging API 食べログbotで、Carousel Typeのボタンを表示しているところ。ショップの一覧を横にスクロールして選べる
Messaging API 「LINE Web Login」を利用すると、アプリ内ブラウザからオートログインが可能。食べログbotではさらに予約をする際「LINEで自動入力」を活用すれば、名前や電話番号を瞬時に入力できる

 また、Messaging APIを使って作られたチャットbotは、複数人のトークやトークグループに入れることもできる。1対1ではない会話の中で情報やコンテンツの提供が可能になるのもポイントだ。

 なお、新しいMessaging APIは、人数を限定して開発者向けに公開していたBOT API Trialのときよりも「クリーンで使いやすいAPI」に作り替えているという。APIドキュメントは読みやすく書き直し、サンプルコードも充実させた。公式SDKはJava、golang、Ruby、PHP、Perl5向けをリリースする。

 また、より画像などの要素が多い「リッチメニュー」「リッチメッセージ」を提供予定であることも明らかにされた。チャットbotの課題として、画面を開いたときに何か話しかけないことには何も始まらないことが挙げられるが、それを解消し、会話の糸口を用意するために重要だという。

 つまり、画面を開いたユーザーが最初のアクションをしやすいよう、写真や画像の入ったリッチメニューを用意して、できることを提示しておく。ユーザーが写真を押すと、それに応じてチャットbotが回答したり、Webサイトに遷移したりするので、やり取りがスムーズに始められるというわけだ。

 リッチメッセージも同様で、画面の中のどこをユーザーがタップしたかに応じて、それぞれ違う場所にリンクする。これはLINE Newsですでに使っている要素で、これもいずれ利用可能にするという。

Messaging API チャット画面を開いたとき、下部にアクションにつながるボタンを用意しておくことで、スムーズにチャットbotとの会話をスタートさせる「リッチメニュー」
Messaging API LINE Newsで利用している、全画面を使ってユーザーが押した場所に応じたリンク先に飛ばせる「リッチメッセージ」

LINE BOT AWARDSも開催

 LINEでは、多くの開発者によるチャットbotの開発を促して、LINE上でさまざまなサービスが展開されるようになって欲しいとの願いから、優秀なチャットbotを活用するアカウントを表彰する「LINE BOT AWARDS」を実施する。10月中に詳細を公表し、2017年1月上旬まで応募を受け付け、2月に結果発表と表彰を行う予定だ。優勝賞金は最大1000万円だという。詳細はLINE BOT AWARDSのWebページなどで告知する。

 LINEでの通知が自由に利用できるようになったり、チャットbotが活用しやすくなったりする今回の発表は、普段から使っているツールでのコミュニケーションが容易になる点で注目に値する。ビジネスシーンでの活用も広がりそうだ。

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