IoTのデータをフル活用した先にできることを予想すると……「ムーアの法則」を超える新世代コンピューティングの鼓動(2/2 ページ)

» 2016年10月21日 08時30分 公開
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自動車IoTのミライ

 私は週末に限らず運転し、時にはスキー場や海岸などへ遠出もします。自動車にも多くのセンサーが積まれていますが、この情報を有効に活用できると、どうなるでしょうか。

 部品に搭載されたセンサーからの情報を利用して、自動車の故障をいち早く察知できることは容易に想像できます。さらにその情報を、例えば、自動車会社が収集して分析し、実際にどのような問題が発生しているのかを把握するだけでなく、対処の仕方を運転者に伝えることもできるようになるでしょう。また、過去の故障車の全てのデータを集めて分析していれば、そろそろ故障しそうな部位があらかじめ予測できるようになります。運転者にその情報としてあらかじめ伝えることで故障する前に部品交換を行えます。

 現在は、まだ点検などでようやく部品の不具合が分かります。もちろん点検をしていない車は故障するまで分かりません。点検時に交換すべき部品が判明しても、修理工場に在庫がなければ取り寄せて交換が終了まで待たなければならないこともあります。こうしたことが事前に分かれば、あとは実際に交換する作業時間だけを見れば良いことになります。

 センサーから拾える情報は、自動車部品の故障やその傾向だけではないでしょう。例えば、走行中のタイヤからの情報を総合することでリアルタイムに道路状態が分かるようになりますから、陥没する恐れがあるような場所について、今までより早く修繕して正常な状態に戻すといったことができるようになります。

 速度の情報も然りです。カーナビに従って慣れない一般道を走ったら、渋滞でストレスになったという体験は多くの人がお持ちだと思います。ある地点を走行している全ての自動車の速度が分かれば、道路の混雑や渋滞状況をリアルタイムに判断して、混雑のない適切なルートを選択できるようになりますし、他の情報と連携すれば渋滞原因も分かります。混雑や渋滞の原因から傾向を知ることでドライバーは、ストレスの少ない運転ができるようになりますし、先ほどの航空機の例のように過去のあらゆるデータの分析が済んでいれば、最適な対処手段を選ぶことで不慣れな道でも安心です。

 IoT時代は、データを全て利用することで、今回紹介したようなもっと便利な生活が実現されるでしょう。ですが、すぐにこんな時代になるとは言い切れません。もちろん企業間の連携や政治的な側面などの外的要因や超えなくてはならないハードルが多々ありますが、ITの側面でも大きな問題があるのです。次回はこれについて触れてみたいと思います。

三宅祐典(みやけ ゆうすけ)

日本ヒューレット・パッカード株式会社の「The Machineエバンジェリスト」。Hewlett Packard Enterprise(HPE)の中央研究所「Hewlett Packard Labs」が認定するエバンジェリストであるとともに、普段はミッションクリティカルなサーバ製品を担当するプリセールスSEとして導入提案や技術支援を行う。ベンチマークセンターのエンジニアとしてHP-UXとOracleデータベースの拡販支援やサイジングを担当後、プリセールスエンジニアとして主に流通業のお客様やパートナー様の提案支援を経験し、現在に至る。

趣味はスキー、ダイビングといった道具でカバーできるスポーツ。三宅氏のブログはこちら。


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