このICE情報は、スマートフォンの持ち主以外が見ることができなければ意味がありません。そのため、ICEの登録情報は、端末がロックされていても表示できるようになっています。
例えばiOSの場合、パスコード入力画面の左下にある「緊急」をタップし、「メディカルID」をタップすると、ICEで登録した緊急連絡先や救急医療に必要な情報が表示されます。このように、端末のロックを外すことなく情報にアクセスが可能です。これはAndroidもほぼ同様です。
この「ICE」という情報の課題は、知名度があまり高くないであろうことです。救急隊員は、その情報の存在を知っていると思いますが、ICEがなくても作業ができるようになっているはずです。
さらに、救急医療時に特別な対処を必要とする既往症がある人の場合、この機能だけに頼るのではなく、メモとして必要な情報を記載し、財布などに入れておく、といった自衛も重要だと思います。そのため、この「スマートフォンの中に登録する」ということはあくまで補助的なものとして考えるべきでしょう。登録した側は「この情報を見てもらえたら、ラッキー」という程度で考えるべきかもしれません。
とはいえ、もし目の前で人が倒れていた場合に、「もしかしたらこの人がICE情報を登録しているかも?」と思い付くことは重要かもしれません。そうすれば、救急車を呼ぶときに、そして救急車が着く前に、何らかの対処が可能になるかもしれないのですから。
人はいつ、どんなときに事故にあったり、倒れたりするか分かりません。こうした“万一の事態”に備えて、ICE情報は入れておいて損はないでしょう。
ただし、これらの情報は機微なものであり、慎重に取り扱うべき内容も含まれています。スマートフォンは肌身離さず、より慎重に取り扱うようにしてください。
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
筆者より:
2015年2月10日に本連載をまとめた書籍『デジタルの作法〜1億総スマホ時代のセキュリティ講座』が発売されました。
これまでの記事をスマートフォン、セキュリティ、ソーシャルメディア、クラウド&PCの4章に再構成し、新たに書き下ろしも追加しています。セキュリティに詳しくない“普通の方々”へ届くことを目的とした連載ですので、書籍の形になったのは個人的にも本当にありがたいことです。皆さんのご家族や知り合いのうち「ネットで記事を読まない方」に届けばうれしいです。
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