コレ1枚で分かる「超分散『エッジコンピューティング』の時代」即席!3分で分かるITトレンド

IoT時代に向け、クラウドコンピューティングと並んで注目されているエッジコンピューティングについて、そのルーツをたどりながら、特徴を解説します。

» 2016年11月21日 09時00分 公開

この連載は

 カップめんを待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! 今さら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。


 1950年代、ビジネス分野でのコンピュータ利用が始まった当初は、計算業務を担当部門に依頼し、順次処理して結果を依頼者に返すといったバッチ処理による利用が一般的でした。

 1960年代に入り、コンピュータをタイプライター端末やCRTディスプレイ端末から直接利用するタイムシェアリング方式へと発展していきます。これら端末は、今のパソコンのようなデータの処理や保管の機能はありません。データの入力と出力のみを受け持ち、データの処理や保管は全て1つのコンピュータで集中処理されていました。また、端末とコンピュータをつなぐ専用のケープルや通信回線は低速で、やりとりできるデータもテキストに限られていたのです。

 1980年代、ミニコンピュータ(オフコン)やオフィスコンピュータ(ミニコン)、そしてパーソナルコンピュータ(パソコン)といった小型で安価なコンピュータが登場します。これにより、大型コンピュータを共同利用するだけではなく、部門や個人でもコンピュータを購入できるようになりました。これに伴い、大規模なデータの処理や保管は大型のコンピュータを使い、部門固有の業務や個人で完結する業務は小型のコンピュータを使うといった分散処理が広がりを見せ始めます。

 ただ、通信回線の速度はまだ遅く、やりとりできるデータはテキストが主流でした。そこで、テキスト主体の業務処理は共同利用を想定したコンピュータ(サーバ)を使い、その結果の表示や加工、編集、画像の利用はパソコン(クライアント)を使う「クライアントサーバ方式」といわれる連携利用の方法が登場し、普及していきます。

 1990年代、インターネットが登場します。そして、2000年に入るころから「インターネットの向こうにあるコンピュータを利用する」クラウドコンピューティングの萌芽が見え始めます。その後インターネットは、高速・広帯域な回線を利用できるようになり、扱えるデータも音声や動画へと拡大していきます。この技術進化と相まって、クラウドコンピューティングは急速に普及していきます。また利用できる端末類もPCばかりでなく、スマートフォンやタブレット、ウェアラブル端末などが加わり、適用業務の範囲も利用者も拡大していきます。

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 昨今は、インターネットにつながるデバイスは、自動車や家電製品、ビルの設備や日用品にまで広がり、そこに組み込まれたセンサーが大量のデータを送り出すようになりました。そのため、大量のデータが通信回線、主にはモバイル通信回線に送り出されるようになり、回線の帯域を圧迫してしまう状況も出てきました。

 そこで、デバイスの周辺にサーバを配置し、中間処理して必要なデータのみを回線に送り出す「エッジサーバ」が普及の兆しを見せ始めています。エッジサーバはデータの集約だけではなく、デバイスを利用する現場での即時処理・即時応答が必要な業務や、きめ細かなセンサーデータを大量に集めるための仕組みとしても使われています。このようなエッジサーバは、空に浮かぶ雲に見立てた「クラウドコンピューティング」に対して、地面に漂うように広がる霧に見立てて「フォグコンピューティング」と呼ばれる場合もあります。

 エッジサーバは、デバイスが置かれるローカルばかりでなく、より広い地域をカバーするために通信回線の経路上に置かれるケースも想定されています。

 IoTの普及とともに、クラウドだけではできない大量データの処理や高速応答を受け持つ役割として、エッジサーバによる超分散コンピューティングは、ますます広がりを見せ始めています。

Photo 【図解】コレ1枚で分かる「超分散『エッジコンピューティング』の時代」

著者プロフィル:斎藤昌義

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 日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら


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