SIビジネスに取りつく“3匹のお化け”は見えていますか? その存在に気付かないでいると、ビジネスに重大な危険を招きかねません。有効な“お化け”退治の方法とは?
カップめんを待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! いまさら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。
※この記事は斎藤昌義氏のブログ「ITソリューション塾」より転載、編集しています。
「どうせできないだろうから」とお客さまから相手にされていないのだと、なぜ気付けないのでしょうか。確かに、工数需要が堅調で、稼働率も高く、売り上げや利益を伸ばしている企業は多い。依頼の多さに応えきれず、困っている企業も少なくありません。しかしそんな状況が、最新技術への感度を鈍らせているのかもしれません。
稼働率が上がっている理由を突き詰めていけば、その多くは「景気の拡大に伴うシステム需要の増大」ではないでしょうか。自らが開拓した「新しい事業や新規の顧客による需要の増大」による稼働率の上昇である割合は、さほど多くないようです。
景気の浮き沈みは、自分たちだけでどうすることもできません。今は好調でも、やがて落ち込む時期が来ます。景気の波に従うしかない企業は、事業計画を作る意味がなく、計画を作ることに費やす時間があれば工数として稼働率を稼いだ方がよほど実利をとれる、ということなのでしょう。
こういう企業にありがちな事業計画は、「社員の人数×稼働率」が根拠となっています。新規事業や新規顧客といった新たな事業価値を生み出して収益を拡大することは、努力目標とされることはあっても、事業計画で実質的に考慮されることは少ないようです。結局のところ「自分で自分の未来を描けない」ということになります。
ビジネスは先手を打ってこそ、成長のチャンスが与えられます。今の好調が新たな事業価値を生み出す「先手」の結果ではないとすれば、それは企業の健全かつ継続的成長を促すものではありません。
しかも、稼働率が高まった結果として、人手不足への対応が優先され、人材の育成をおろそかにし、また新規事業への取り組みを先送りしているとすれば、ますます先手を打つことは難しくなります。
景気が退潮に向かいはじめると、稼働率は減少し、人件費負担が重くのしかかり、苦しい経営状況に追い込まれてしまうことでしょう。そのときに新しいことを始めようとしても、成果をすぐに得られることはありません。
一方で、落ち込んでもやがて復調するのが景気だとすれば、「厳しい時期をなんとか耐えしのげばいいではないか」という楽観論もあります。しかし、そんな簡単なことには、ならないでしょう。
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