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» 2019年03月29日 07時00分 公開

即席!3分で分かるITトレンド:コレ1枚で分かる「クラウドがSIビジネスを崩壊に追い込む理由」 (1/2)

ITエンジニアの約7割がユーザー企業に所属する米国と、SI事業者やITベンダー側に所属する日本では、クラウドのメリットは、意味合いが異なっていました。ITの内製化が進みはじめた今、この流れが変わり始めています。

[斎藤昌義(ネットコマース株式会社),ITmedia]

この連載は

 いまさら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。


SI事業者にとってリスク大のクラウド

 クラウドは、ITエンジニアの約7割がユーザー企業に所属する米国で生まれた情報システム資産を調達する仕組みです。

 クラウドは、リソースの調達や構成の変更などが容易で、ITエンジニアの生産性を高め、コスト削減に寄与するとされています。そのため、ITエンジニアを社内に多く抱える米国では、クラウドはユーザー企業のコスト削減に直結しています。

 一方、日本では、ITエンジニアの約7割がSI事業者やITベンダー側に所属しています。従って、このような仕事は、システムの構築や運用を受託して工数を提供しているSI事業者側に任されており、クラウドはSI事業者の生産性を向上させ、必要な工数を減少させるものとなっています。

 また、調達や構成の変更はリスクを伴う仕事です。米国では、そのリスクをユーザー企業が引き受けていますが、我が国ではSI事業者が背負わされています。

 このことから見えてくるのは、SI事業者にとって、クラウドは、案件単価が下がり、リスクも大きくなることを意味し、メリットがないということです。我が国のクラウドサービスの普及が米国ほどではないといわれている背景には、このような事情があるのかもしれません。

Photo 【図解】コレ1枚で分かる「クラウドがSIビジネスを崩壊に追い込む理由」

 エンジニア構成の配分が、このように日米で逆転してしまっているのは、人材の流動性に違いがあるからです。

 米国では、大きなプロジェクトがあるときには人を雇い、終了すれば解雇することもさほど難しくはありません。必要とあれば、また雇用すればいいのです。

 一方、日本では、このような人材流動性は小さいのが現状です。そこで、この人材需要の変動を担保するために、SI事業者へのアウトソーシングを行い、需要変動の振れを吸収しています。

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 ところで、クラウドを使う場合、リソースの調達や構成の変更は、Web画面で行われ、必要なシステムの構成や条件を画面から入力することで、直ちに必要なシステム資源を手に入れることができます。

 従来、このような作業は、業務要件を洗い出し、サイジングを行い、システム要件を決め、それに合わせたシステム構成と選定を行うことが必要でした。そして価格交渉と見積作業を経て、発注に至ります。その上で、購買手配が行われ、物理マシンの調達、キッティング、据え付け、導入作業、テストを行っていました。この間、数カ月かかることも珍しくはありません。

 クラウドは、このような作業を必要とせず、Web画面から簡単に行うことができるので、生産性は大いに向上します。

 しかし日本のユーザー企業は、このような作業の多くをSI事業者に依存してきたため、いまさら自分でやれといわれても、簡単には対処できません。一方のSI事業者も、受注単価が下がり、人がいらなくなるので、積極的にはなれません。ここに、“暗黙の利害の一致”が生まれており、これもまたクラウド利用促進の足かせになっていると考えられます。

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