“不確実性”を技術で解決してこそ「エンジニア」――リクルートが挑む内製化への道(1/5 ページ)

ビジネスの要件に対して柔軟なシステムを作るために「内製化」に舵を切る企業が増えてきている。5年ほど前から内製化に取り組んできたリクルートテクノロジーズは、時には失敗も経験しながら、そのメリットを見定めてきた。同社が考える内製化成功のポイントとは?

» 2019年02月21日 08時00分 公開
[大内孝子ITmedia]

 日本の事業会社の多くは、内部に開発部門を持っていない。大規模な開発はSIerなどのパートナー企業に任せ、IT部門のミッションはシステムやインフラの運用――あなたの会社もそんな体制ではないだろうか。

 しかし、クラウド化が進み、ビジネスの動きに柔軟に対応できるシステムが求められるようになった今、ビジネスの現場と、より連携できる形で開発を進められる「自社開発(内製)」に舵を切る企業が増えてきている。

photo リクルートテクノロジーズ 執行役員 ITエンジニアリング本部 宮川典久さん。分社化の直後にリクルートテクノロジーズに入社し、これまでアーキテクト部門やインフラ部門を統括してきた

 人材派遣からメディア、各種Webサービスまで幅広い事業を展開する「リクルート」も例外ではない。同社は、2012年の分社化で、全社横断でITソリューションを提供する機能会社「リクルートテクノロジーズ」を設立し、そこから徐々に内製化が広がった。最初の取り組みは、中途採用で積極的にエンジニアを集めることだったという。

 「当時新卒については、リクルートホールディングス全体で一斉に採用して、そこから配属される形だったのですが、中途採用に関しては独自性を持てるようになりました。それ以降、われわれの中でも『エンジニアリング力』を付けていこうという風潮になりました。とはいえ、当時はまだ、社員エンジニアがプロダクト開発をやることはありませんでしたね」(リクルートテクノロジーズ 執行役員 宮川典久さん)

 社員エンジニアは当時、全社で利用するアプリ開発フレームワークの開発などを行っていたが、宮川さんによると2013年ごろから本格的にプロダクトの自社開発が始まったという。そのきっかけは「スマートフォンアプリ」だった。

「SIerにノウハウがない」から自社開発へ

 Webアプリについては、SIerに開発を依頼してきた同社だったが、新しく生まれたスマートフォンアプリについてはSIerにもノウハウがなく、エンジニアも枯渇していた。開発については手探りな部分も多く、エンジニアを社内で育てるアプローチも行った。

 「当時はエンジニアも不足しており、ノウハウもどこにもない状態でした。内製化を始める理由としては、自然だったのではないかと思います。その後、サービスの利用者も、Webからスマートフォンアプリへと急激にシフトしていきました。それに合わせて、アプリ開発者の採用も強化していきました」(宮川さん)

 現在はプロダクトの内製開発を行うエンジニアは約100人。独自採用が始まったころ、リクルートテクノロジーズの社員数は150人程度だったが、今では約750人にまで増えたそうだ。

 宮川さんがプロダクト開発を統括する立場になったのは、2016年のこと。内製化が本格化して1年、同社は早くもその方向性を大きく変えるポイントに来ていた。

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