“不確実性”を技術で解決してこそ「エンジニア」――リクルートが挑む内製化への道(4/5 ページ)

» 2019年02月21日 08時00分 公開
[大内孝子ITmedia]

 「各プロダクトにおいて、何が課題になっていて、どういう人にどう対応してもらうのかという部分まで考えられるような、リーダーを育成しようとしています。そういう人がプロジェクトに入らない限り、エンジニアの世界だけで解決できるような課題は解決できても、ビジネス的な価値と課題をひも付けるところまではたどり着けないと思います。何とかそこまで持っていくために、試行錯誤しているところです」(宮川さん)

 例えば「UIやUXの改善スピードを上げたい」という課題があったしよう。これに対する答えは無数にある。その部分だけ切り出してスクラムで開発するのか、大規模になりそうだから、パートナー企業にやってもらうのか。あるいは、技術的な負債がたまって生産性が落ちている箇所があれば、その課題を解決できるエンジニアを入れる、といったジャッジも求められるのだ。

エンジニアが解決すべき課題は「不確実性」

 宮川さんは、内製化の本質的な価値は「不確実性」、つまり将来的に発生する可能性があるリスクへの対処にあると考えているという。同社では今、内製のエンジニアが解決すべきテーマは「ビジネスの不確実性」「技術的な不確実性」の2つにあると定義している。

 例えば、「ある画面にチャット機能を入れたい」という要望がビジネスサイドから上がってきたとする。簡易的なテストを行い、ビジネス上の効果を検証することは、「ビジネスの不確実性」の解消につながるだろう。

 ただ、この際に「どの程度作り込むのか」「それにはエンジニアのリソースがどれだけ必要か」と見極め、実現までの絵を描いてビジネスサイドに提案できる。それができるのはエンジニアリング、つまり技術が分かっている人間だ。

 「不確実性の解消に内製化を使う、という目的で組織を育てようとしています。ビジネスと技術。両者の視点は大きく異なるので、それを一人で見つけるのは難しい。いろいろな人が集まって議論する中で見つけられればいいと考えています。それこそが、エンジニアが提供できるビジネス的な価値ではないかと。問題の大きさはさまざまですが、不確実性を解消していくところに社員が活躍できるような構造を作っていきたいですね。

 内製化と言うと、手を動かせる、コードが書ける、といった発想になりがちですが、それはベースとしてはあるものの、課題があれば何とかしようと自発的に思えるような、そして、課題を見つけるだけではなくて優先順位を付けて解決できる。そこまでができるレベルの人がいて初めて可能になると考えています。ビジネスサイドからの要件を単にのむだけではなく、適切な手段で開発を進めるというジャッジができることこそが、その本質でしょう」(宮川さん)

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