「で、それ本当にできるわけ?」 実現可能性の調査で大失敗DMP成功まで、あと1センチ(5)(2/3 ページ)

» 2017年01月13日 08時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]

SIerや代理店が、デジタルマーケティングテクノロジーの知識に弱すぎる

 ここ2〜3年の間に、「アドテク」は「デジタルマーケティングテクノロジー」へと進化を遂げ、マーケティング全般にテクノロジーを用いることが当たり前になってきました。さらに米国では「UX」を追求しようと、顧客体験自体をマーケティングとテクノロジーでデザインするトレンドが出てきており、広告枠の売買だけでは満足してくれない米国広告主が増え始めています。

 このトレンドが日本に波及することは、SIerには追い風、広告代理店には向かい風なのですが、日本は欧米諸国に比べて、デジタルマーケティング全般を支えるテクノロジーをキャッチアップしている人が、相対的に少ないのが現状です。ツールベンダーなど、専門技術を分かっている人を呼ぶというスタンスが原因かもしれません。

photo マーケティングの世界では、先端テクノロジーの活用が当たり前になりつつあります(写真はイメージです)

 例えば、ECのDMPを作るとなれば、「クロスデバイス計測やIDのひも付け、位置情報の取得、RFID、在庫管理共通のデータベース群といった、オムニチャネルを実現するためのリアルとの統合」と、「それを支える『Redshift』や『Vertica』といった大量データ処理基盤」といった技術の知識は必要不可欠です。もしかしたら「リアル店舗にログインする」という顧客体験のために、スマホを使った新たな技術が出るかもしれません。実際、レジに並ばず買い物ができるという未来を、私たちは「Amazon Go」で目撃しました。

 問題は、こうした技術を分かっている人をツールベンダーから呼ぶと、SIerや広告代理店がただの“伝書鳩”になりかねない点です。すると「分かっている人」が間に立って翻訳しないと、実現可能性の調査が進まなくなります。ツールベンダーも導入見込みが薄い調査協力には多くのリソースを割けません。撤退されてしまうと、プロジェクトが早晩行き詰まる可能性が高まります。

 その結果、可能性の追求の先送りばかりが起きてしまい、やがて、進むも戻るも地獄の案件に仕上がってしまうのです。これを解決する方法はただ1つ。必要最低限の事柄だけでも、技術を勉強するしかないでしょう。これに関する特効薬はありません。実際、カンファレンスなどに足を運ぶと、その努力をしている人が大勢いることが分かります。とにかく「学び続ける情熱」が大事なのです。

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