街のラーメン屋でも導入できる “月額3万円のAIロボット”の働きぶりはMicrosoft Focus(2/2 ページ)

» 2017年02月18日 08時00分 公開
[大河原克行ITmedia]
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 こちらは、長時間滞在型店舗向けコミュニケーションモデルという位置付けで、自然言語での対話を可能にする「LUIS」や「りんな」の技術を使って話したり、ロボットと人感センサーとの連動によって入退店時にあいさつしたり、といったことができる。「ロボットだけでは入店なのか、退店なのかを理解することができない。そこで入口にセンサーを取り付け、ロボットと連動させることで理解できるようになる」(篠田氏)という。

 効果も見え始めており、「2016年12月から設置を開始しているが、前年同期比で10%の来店客増につながっている。とくに、飲みニケーションロボット席を予約したいという声が増えていると聞いている。広告費をかけずに予約を増やすことに成功している」(篠田氏)という。

 これらの実証実験では、集客という点で効果を発揮しているのは明らかだが、篠田社長は、「ロボットは集客効果だけでは普及しない」と考えている。「いかにビジネスに貢献できるかという視点が必要。集客以外の効果をもたらす機能強化に取り組みたい」(篠田氏)

 顔認識による顧客の個別認識や、自然言語の会話によるあいさつと接客、タブレットやロボット型デバイスと連動した注文などにとどまらず、決済機能や店舗オペレーションに必要なチケットやレシートの発行といった業務の効率化につながる機能の提供、収集したデータを分析し、そこからもたされる洞察をもとにしたサービス改善、ロボットを活用した顧客への最適なサービスの提供などに取り組むという。

 居酒屋では、もう一杯飲んでもらえるかどうかが収益の上昇に直結する。ロボットと親密なコミュニケーションをするなかで、『もう一杯飲みませんか』と言われれば、思わず頼んでしまうということも起こるかもしれない。

 両社では、2020年までに、200社へのサービス導入を計画している。

AI選びのポイントは

 ヘッドウォータースは、よしもとロボット研究所と提携しており、これまでPepper向けに250以上のアプリを開発してきた経緯がある。

 同社の篠田社長は、「Peeper向けアプリ開発では最も多くのアプリを開発しており、多数のPepperで利用されている。実証実験や導入実績を通じて多くの知見を蓄積しているのが特徴」とする。

 その同社が、今回のサービスにマイクロソフトのMicrosoft Azureで提供するAI機能「Cognitive Services」を選んだのには理由がある。

 これまでにもさまざまなAIを検討し、採用してきた経緯があるが、篠田社長は、「特定分野に限定せずに汎用的に使えるAIであること、継続的な投資により、今後の進化が見込めること、それが最先端の技術であること、さらに、これをリーズナブルな価格でエンドユーザーに提供できる環境が整っているのが、AzureのCognitive Servicesであった」という。

 ロボットの活用を広げたいと考えるヘッドウォータースにとって、「エコプロダクション(低価格で提供できる製品)」(篠田社長)であるとともに、機能にも妥協がないマイクロソフトのCognitive Servicesは、最適な選択肢になったというわけだ。

 また、現時点では、ヘッドウォータースからの直販体制となっているが、日本マイクロソフトのCSP(クラウド・ソリューション・プロバイダー)プログラムに参加する全国のシステムインテグレーターなどを通じた販売拡大も見込めるという。

 一方で、日本マイクロソフトの支援体制も強力だ。

 CSPプログラム参加企業との連携提案だけでなく、Azure専任担当者による技術支援体制やビジネスモデル開発での協力を進めていくという。また、ヘッドウォータースは、日本マイクロソフトが推進するIoT共創造ラボにも参加。今後、同ラボの参加企業との連携も視野に入れているという。

Photo 日本マイクロソフト マーケティング&オペレーションズ部門クラウド&エンタープライズビジネス本部クラウドプラットフォーム製品マーケティング部エグゼクティブプロダクトマネジャーの相澤克弘氏

 日本マイクロソフト マーケティング&オペレーションズ部門クラウド&エンタープライズビジネス本部クラウドプラットフォーム製品マーケティング部エグゼクティブプロダクトマネジャーの相澤克弘氏は、「クラウド型顧客おもてなしサービスの進化に向けて、今後も協力体制を敷いていくことになる。一方で今後のマイクロソフトのAI技術の普及に関しては、PDU(プラクティス・デベロップメント・ユニット)を通じた、パートナー拡大にも取り組む」と説明する。

 日本マイクロソフトの平野拓也社長は、2017年1月18日に行った下期の事業方針説明において、「マイクロソフトのAI技術が居酒屋やラーメン店にも導入されはじめている」と話しており、これこそがヘッドウォータースとの協業を指したものだ。平野社長は、「これまでAIは、利用したくても高価なイメージがあってハードルが高かったが、日本マイクロソフトは誰でも使える価格設定にしている。これを多くの人にしってもらうことが大切である」と語る。

 月額3万円のクラウド型顧客おもてなしサービスが、どのような形で“AIとロボットの普及”に弾みをつけるかが注目される。

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