外資系パッケージソフトの導入で失敗しないための方法を解説する本連載。前回に引き続き、いわゆる仕様とバグの問題を取り上げます。この争い、実は製品を購入してしまったあとでは、ユーザー企業が不利になるケースが多いのです。その理由とは?
「それは仕様です」
ITシステムの導入に携わっていれば、この言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。今回も前回に引き続き、ソフトウェアの仕様とバグをめぐるメーカーとユーザーの攻防をご紹介します。
前編では、ソフトウェアのサポート窓口Aさんとユーザー企業の運用担当者Bさんが、ソフトウェアの動作について、それがバグなのか仕様なのかとやりとりをしていましたが、メーカー側であるAさんはそのソフトウェアの仕様を説明し、Bさんはその内容を受け入れました……が、一転Bさんが攻勢に出始めます。
ソフトウェアの運用担当者 B:……なるほど。5分以内に設定できないのは仕様との言い分は分かりました。それでは、弊社だけにその制限を外すパッチを提供してもらえませんか。なにか動作上不具合があっても私が責任を持ちますから。
ソフトウェアのサポート窓口 A:残念ながら、当社は個別のお客さま向けのパッチを提供するサービスを行っておりません。ご要望に沿うことができず申し訳ございません。
B:このソフトウェアのプログラミング言語はJavaですよね? 私はJavaでプログラミングできますから、この部分のソースを私に送ってくださいよ。そしたら私がパッチを作りますから。
A:申し訳ありません、製品のソースコードは公開できないことになっております。
B:分かりました。もともとそういう動作を期待して買ったのですが、出来ないのであれば返品を検討せざるを得ません。別途購買より交渉させていただきます。
A:お待ちください。ご要望に沿えないことは大変申し訳なく存じますが、そのようなソフトウェアへの改善や、機能拡張の要求をお受けする窓口がございまして、そちらをご案内いたします。
B:そんな窓口があるんですか。そちらに連絡すると、どれくらい待てば解決してくれるのですか。
A:いえ、そちらの窓口はあくまでお客さまの要望を受け付ける窓口でして、それが実現されるかの確証はなく、それは弊社のソフトウェア開発部門で決定されます。
B:伝えるだけで、それが実現されるか分からないのでは意味がありません。やはり返品を検討せざるを得ないようです。
A:(困ったな。。)承知いたしました。それでは、弊社営業より早急に連絡させますので、そちらをお待ちください。
読んでいて「融通の利かないメーカーだなぁ」と思われたかもしれません。Bさんも要求を言い出した手前、引けない状況になってしまったのだと思われますが、私の経験上、俯瞰(ふかん)的な視点で冷静に話を重ねれば、今回のような、製品のごく一部の機能が原因で、本当に返品されるステージまで話を進むことはまずありません。
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