「これバグでしょ?」 vs. 「それは仕様です!」(後編)失敗しない「外資系」パッケージソフトとの付き合い方(3/3 ページ)

» 2017年04月05日 08時00分 公開
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 また、ソフトウェアの開発にこのプロセスを適用した場合、それがバグの修正と仕様変更のどちらなのかが重要になります。バグの場合、現状が“あるべき姿”ではないので、審議も比較的通りやすいのですが、仕様変更の場合は、その理由から審議する必要があります。

 それが「多数の顧客のうち、1人が要求している」だけでは、十分な理由とはなりません。実施の判断を下すためには、多くの顧客からその要望が出されている、市場のトレンドに合うなど、明確なビジネス上のメリットが必要です。

 さらに、仕様変更のインパクトに対する分析も慎重に行う必要があります。変更を行ったことで、別の仕様と干渉するのは望ましくありません。

 もちろん、バグ修正の場合でもインパクト分析は行われますが、元来の設計に直す作業であるため、影響範囲は局所的になりやすいです。それが仕様変更となると、機能の依存関係の洗い出しなど、より広範囲な分析が必要になるでしょう。仕様を「変更する」というのは、単に見えているものを変えればいい、という簡単な話ではないのです。

バグか仕様か――永遠に続く戦い

 いかがでしょうか。同じ「変更」であっても、それがバグなのか仕様なのかで、結果は大きく異なるのです。これを理解していないと、実現可能性の低い事象に多大な労力を使ってしまい、せっかくのフィードバックの機会を失うことになりかねません。

 バグか仕様か、判断が難しいケースもありますが、前編から読んでいただいた方であれば、メーカー側が「仕様です」と言うことに対して、バグだと立証するのは、その設計を知りえないユーザーでは難しいことが分かったのではないかと思います。

photo 「バグ修正」と「仕様変更」の比較

 それ以外は全て自分の「要求仕様」と割り切るのも近道ですが、メーカーも人ですから、合理的な説明をしているか、バグを「仕様」だと変な言い訳をしていないか(ないと信じたいです)、ユーザー側でも見極める目を持つことは必要だと思います。ソフトウェアに限った話ではありませんが……。

 さて、次回はいよいよ最後のテーマ、運用の道のりで必ず出てくる「ソフトウェアのバージョンアップ」の話です。お楽しみに。

著者紹介:吉丸新一郎

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 日本ヒューレット・パッカード株式会社 プロフェッショナルサービス コンサルタント / シニアアーキテクト。自社のエンタープライズ向けソフトウェア、特にハイブリッドクラウド管理、データセンター運用自動化製品を専門とした導入コンサルティングを担当。

 製造業システム子会社でのデータセンター事業企画・運用、ベンチャー企業での新規事業開発および運用を経て、ソフトウェア利用者の立場をサプライヤーの立場に変え現業に従事、現在に至る。

 趣味は音楽鑑賞(ジャズやクラシック)や歌舞伎やオペラの観劇など。旅行が好きで、食べ歩きが得意ジャンル。

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