就活売り手市場に悲鳴、「デジタルレイバー」に期待を寄せる日本企業

「RPA」、いわゆるデジタルレイバーの導入が、生産性向上や働き方改革など、さまざまなビジネス変革の第一歩として脚光を浴びつつある。

» 2017年04月05日 11時00分 公開
[浅井英二ITmedia]

 「過去最高の就職率が続く、いわゆる売り手市場によって企業の人手不足は一層厳しさを増しており、その解決策としてRPA(Robot Process Automation)が脚光を浴びている。RPAへの期待の高さも過去にないものだ」

 こう話すのは大手コンサルティングファーム、KPMGコンサルティングの椎名茂副社長だ。2020年にはRPAと一部のAIを組み合わせた業務改革のコンサルティングおよび導入市場は1兆4000億円規模に急拡大するとみられている。同社ではこの4月からRPAを活用した顧客企業の業務改革を支援する専門組織を立ち上げ、20数社のプロジェクトに参画しているが、2年後にはその取り組みを100社まで拡大させたい考えだ。4月4日には、都内のホテルでRPAをテーマとした経営層向けのセミナーを開催し、500社を超える顧客企業を集めた。

 専門組織の責任者を務める田中淳一パートナーは、「RPAは、ホワイトカラーの生産性向上や政府が推進する働き方改革など、さまざまなビジネス変革の第一歩として短期間で成果を得られるほか、情報システムの視点ではERPのアドオンの代替やシステム間の簡便な連携手段として位置付けることもできる」と話す。

「デジタルレイバー」という新しい概念

 RPAは、ホワイトカラーの定型業務などを自動化し、人の事務作業を補完する「デジタルレイバー」という新しい概念として企業に浸透しつつある。Class1からClass3まで自動化のレベルによって3つの段階に分類されており、Webやデータベースから情報を取得(クローリング)したり、紙の文書から文字を読み取ったり、それらデータを入力および検証するといったClass1の定型業務自動化は既に実用段階にあり、定型事務作業をマクロのような仕掛けで記録し、自動化するツールも導入実績を重ねてきている。

日本での実績も豊富なBizRobo!。株価サイトからデータを取得し、分析・レポートする定型作業を簡単に記録し、自動化できる

 セミナーに併せて開催したプレス向けのブリーフィングでは、経費精算システムで申請されたデータが正しいのか、Yahoo!乗換案内でチェックする検証作業を自動化するデモや、amazon.comからコンサルティングに関する書籍を抜き出してExcelに一覧化するデモも行われた。

 いずれも別々のシステムを簡便につなぐことで、突合検証したり、情報取得したりする作業の自動化といえる。どこのオフィスでも行われているこうした作業は、理想を言えば、きちんとシステム連携させるべきところだが、技術的な問題や費用対効果などによって人手によって行われているものだ。

 これまで企業はERPをはじめとする基幹業務システムに膨大な投資と手間を掛けてきたが、自動化されたオフィス業務は限定的だったといえる。データの入出力を考えてみても、紙の文書からの転記はシステム化に向かないと考えられ、データの分析やレポートは手作業でExcelに落として行うといった具合だ。

 しかし、こうした人手でしか対応できないと考えられていた作業も効率化できる範囲が飛躍的に拡大しつつある。KPMGコンサルティングの顧客企業では、取り扱う請求書の8割は約20種に分類可能だった。標準化が難しい紙の請求書でもRPAでその多くが自動入力でき、人の作業を補完できるようになるという。

 「RPAは、必ずしも標準化をしなくても効果が出やすい仕組みだ。固有の業務プロセスが多く、情報システムの標準化が不十分な日本企業にとっては、RPAの恩恵も大きいはずだ」と田中パートナーは話す。

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