“意見が出ない会議”を変えるテクニックプロジェクトマジック(2/2 ページ)

» 2017年08月04日 10時00分 公開
[白川克ITmedia]
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10割配分法で意見を引き出す

 職場の意見調整に10割配分法を利用してみましょう。

 例えば、プロジェクトの立ち上げ段階で「現場がうまくいっていないんだよね」「そうそう!」みたいな話で盛り上がっているとします。まだしっかりした調査をする前で、何がどうマズイのかをデータで示すことはできない段階であるものの、ここでメンバーが腹の中を見せ合って、違いについて議論したり、一致していることを確認したりしておきたいところ。

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 そんな場合、私なら、「現場のマズさは、何が原因だと思いますか? 現時点の感覚で構わないので、ざっくり配分してみてください。聞いたところ、こんな印象ですが……」などと話しながら、

  • 役割分担やルールのマズさ:3
  • ITのマズさ:2
  • 教育のマズさ:5

などと書いてみます。

 そうすると、「いや、私は3:6:1ですね」とか、「うちの問題は教育でしょ。1:1:8くらい」とかといった意見がどんどん出てきます。そうやって、それぞれがどうしてそう思っているのかを語ってもらうのです。中には、「3つのどれでもなく、経営の問題だ!」のような意見が飛び出すこともあります。

 プロジェクトの立ち上げの段階では、事実やデータを基に確実なことをいう必要はありません。「私はこう思っているけど、みんなはどう?」というのをメンバーがきちんと見せて確認し合い、プロジェクトの肝となりそうなポイントに当たりが付けばいいのす。

 もちろんこの段階では、仮説にすぎません。実際に調べてみたら、ITが“腐って”いたとか、教育らしい教育をしないで放置する“名ばかりのOJT”になっていたとか実態が分かってくるでしょうから、その後に同様の意見交換をすれば、もっと地に足の着いた議論になります。プロジェクトとは、そうやって立ち上がって、だんだん核心に近づいていくものではないでしょうか。


 「人から意見を引き出し、違いについて語り合いながら、各人の意識を1つのゴールに向けてそろえていく」というファシリテーターの作業は、こういう地道な議論の積み重ねです。モヤモヤした考えや感覚から意見を引き出すのは意外と難しいものですから、この手の引き出しをいくつも持って、場合によって使い分けることができたら、上級ファシリテーターといってよいでしょう。

著者プロフィール:白川克

ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのコンサルタント。ファシリテーションを使ってプロジェクトを成功させるのが得意。

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