「法律で定められれば、こうした動きは統一されてくると思いますが、現状では罰則があるわけではないので、組織や企業として、どこまでの精度で取り組むかという“自主性”に任せられている面があります」(加藤氏)
加藤氏は、Webアクセシビリティの難しさとして、いくら規格で定められた通りにしていても、当事者の持つ意識によって見え方が変わってしまう点を上げる。
海外の事例ではあるものの、オーストラリアのシドニー五輪で、視力に障害がある人が「競技記録が見えない、差別を受けた」とオリンピック委員会を訴えたほか、「通販サイトで認証が見られないため買えなかった」といった理由で、通販会社が訴えられたケースもある。訴えられること自体が企業としてデメリットになるのだ。
「全体に占める割合で考えれば、障害者の方は少ないですし、彼らがWebページを見てもビジネスに貢献しないのではないかという判断をされれば、Webアクセシビリティがおそろかになってしまう。実際にお金をかけてバリアフリーに対応していても、情報としてそれが伝わらないというのはもったいないです。障害者の方が生活する上でWebは重要ですから。これを企業の方に一生懸命伝えています」(加藤氏)
日本では、高齢化が他の先進国よりも進んでいる。視力が落ちたり、手足の動きが鈍くなったりしたときに、初めて生活にPCが必要になったりするケースも少なくない。Webアクセシビリティは、もう障害者だけの問題ではないのだ。
こうした状況に危機感を持ち、Webアクセシビリティの必要性を理解してもらう、啓蒙として使えるようにインフォ・クリエイツが開発したのが全ページプログラム検査「AMCC」だ。
これは、総務省がWebアクセシビリティ対応支援として開発しオープンソースとして配布している「michecker」をエンジンとして使い、機械的な検査ができるツールだ。基本的な検査項目はmicheckerと同じ。いわゆるプログラムで検査できる部分だ。
ローカル環境にインストールし、動作させなければいけないmicheckerと異なり、AMCCはクラウド(IBM Bluemix)上にあるため、ユーザー側はAMCCに検査したいURLを入力するだけで、あとはシステムが自動クロールで指定したリンク以下を取得し、検査を実行してくれる。検査のタイミングを指定することも可能だ。
既に都道府県の行政や中央省庁、各業界の大手企業のサイトなど、自動クロールでデータを蓄積しており、業界内での比較一覧などを見ることもできるという。
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