デジタルによる既存産業の崩壊は、“他人ごと”ではない PwCが説く“その日”への備えWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2017年11月27日 12時30分 公開
[松岡功ITmedia]
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ビジネスの在り方の再創造は“未来を発明”すること

 さて、ここからは冒頭でも1つ紹介した松永氏の会見での言葉を巡る話が非常に印象深かったので取り上げておきたい。

 まず、「デジタル」について松永氏は次のように語った。

 「デジタルとは単に技術のことを指すのではない。デジタルとは新しいクリエイティブな問題解決であり、ユニークな顧客視点に立ったカスタマーエクスペリエンスの構築であり、企業や社会のイノベーションを加速することを意味する。それはビジネスおよび社会の在り方を“再創造”するものである」

 この発言の中に出てきた「カスタマーエクスペリエンス」については、「デジタルを駆使して顧客にユニークな体験をしてもらうためにはどうすればよいか。それを考えるうえでは、既存の顧客ニーズではなく、5年後、10年後の顧客ニーズを予測して創造していくことが大事なのではないか。私たちはそれをエクスペリアンスと捉えている」と説明した。

 そして、先ほどの「再創造」の話につなげて次にように語った。

 「ビジネスおよび社会の在り方を再創造するのは、まさに“未来を発明”することだ。過去と現在の延長線上にある未来を予測するのではなく、今、求められているのは、クリエイティブな手段によって、果敢に未来を発明することだ。未来の発明を目指したイノベーションを“無”から生み出す。それはもはや、既存のビジネス手法では解決し得ない。未来を発明するために、無からイノベーションを生み出す。そのときもはや、既存のビジネス手法は通用しない」(松永氏)

 では、どうすればよいのか。「対応策の1つにアートがある。アーティストが創作するときは、常にゼロベースでものを考えるからだ。アートのようなカスタマーエクスペリエンスをビジネスの世界にも取り入れ、これから先にある未来を既成概念にとらわれることなくゼロから創造していきたい」と松永氏は語った。

 アートの話が出てくるのは、ミュージシャンの経歴を持ち、エンターテインメントに精通したメディア戦略コンサルタントとして活躍してきた松永氏らしいところだ。それにしても、同氏はどうしてこのようなことを考えたのか。その背景にあるのが、冒頭の発言である。

 「例えば、金融業界。スマートフォンの普及やFintechの台頭などによって、これまでの金融業界の垣根は崩壊し始めている。その中で、既存の銀行は今後も存在し続けられるのか。この経営課題については、過去のどんな経験も通用しない。まさしくゼロから未来を創造していかなければならない」

 これが、松永氏が説く「デジタルディスラプション」、つまりデジタル技術による破壊的創造である。それは「既存産業が崩壊する日」を想定したものともいえる。

 あなたの会社では、デジタルディスラプターを新規参入くらいに受け止めてはいないだろうか。この話は誰にとっても自分の居る会社や業界の存亡がかかっていることを肝に銘じておく必要がある。

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