2018年のIT業界は、2017年に引き続き、AIをはじめとした最新技術によるデジタル革命の話題で幕を開けた。が、この最新ITとユーザー企業との間にギャップが起きているのではないか。
本連載Weekly Memoも今回で485回目となり、10度目の新年を迎えた。あらためて読者諸氏に感謝申し上げたい。
これまで新年初めにはIT業界の最新動向について書くことが多かったが、今回は筆者がこのところ取材を通じて最も懸念していることをテーマに挙げたい。
それは、最新ITとユーザー企業との間にギャップが起きているのではないか、ということだ。ギャップとは、AI(人工知能)をはじめとした最新ITによるデジタル革命を迫るIT業界に対し、多くのユーザー企業がどう取り組めばよいのか、戸惑っているのではないかというものだ。
そこで、こうした懸念に対して、例えばAIがこれからユーザー企業のビジネス現場にどのように入り込んでいくのか、また、AIを含めた最新ITとユーザー企業との間のギャップを埋めるために、IT業界としてどのような取り組みが求められるか、について、IT企業トップの年頭所感と最近の本連載記事などを交えながら考えてみたい。
まず、AIがこれからユーザー企業のビジネス現場にどのように入り込んでいくかだが、これについてはセールスフォース・ドットコムの小出伸一会長兼社長が年頭所感で次のように述べているので紹介しておこう。
同社は2017年、2016年に発表した「Einstein AI」の機能やソリューションの提供を一層充実させた。機械学習とデータサイエンスを組み合わせて営業案件の優先順位を示唆したり、CRMに画像認識を活用したり、AIを組み込んだアプリケーション開発を迅速に行う機能などがその例だ。その上で同氏は、「2018年もますます“AIの民主化”を目指し、利便性と操作性を高めたCRM上のAI技術の供給に努めたい」としている。
また、日本IBMのエリー・キーナン社長は同じく年頭所感で、「2018年は、企業においてAIが簡易な作業からビジネスの中核となるプロセスにまで浸透していく」との見解を示した。同社は「IBM Watson」を「ビジネスのためのAIプラットフォーム」と位置付けており、国内で350社以上が利用し、業種別のパッケージソリューションも45個を数えるという。
以上、セールスフォース・ドットコムと日本IBMのケースを紹介したが、すなわちAIは、アプリケーションに組み込まれてビジネス現場に入り込んでくる。従って、ユーザー企業はそれを有効活用するところから始めればよいのではないだろうか。
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