IIJが通貨のデジタル化を目指して「ディーカレット」を設立、FinTech事業に参入エンコインが登場するかも!?

さまざまな事業に取り組んでいるIIJが、合弁会社「ディーカレット」を設立し、デジタル通貨の取引や決済を担う金融サービス事業に参入する。

» 2018年01月26日 08時00分 公開
[田中宏昌ITmedia]

ビジョンは「現金を使わない生活を、ふつうに」

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は2018年1月25日、通貨のデジタル化を目指して合弁会社「ディーカレット」を設立し、金融サービス事業に参入する。ディーカレットは新たな社会インフラとして、デジタル通貨取引のスタンダードを目指すという。なお、ディーカレットは1月10日に設立済みで、2018年秋頃の営業登録を目標にしている。

photo IIJが目指す金融サービス事業の概要

 発表会でIIJ 代表取締役会長 CEO 鈴木幸一氏は「1992年のIIJ設立から26年がたった。徐々にではあるが、インターネットが世の中の仕組みを変えてきており、IIJはインテーネットを使う上で最も大事なもの、大切な技術を日本で早くから取り組んできた。プラットフォームを変える基礎的なものを提供してきたと自負している」とこれまでを振り返り、「昨今、ブロックチェーンなどFinTech回りの技術がかなり育ち、世界的に見てFinTechが現実的なものになってきたのに加え、お隣の中国のように、現金を使わないで済むような社会も出てきている。日本でも、中国とは違った形で決済が変わっていくのは時間の問題であり、今こそ有力な会社と組んで、長年温めていた企画を実行に移す時期だと考えた。今回、仕組みを変える対象が通貨につながる金融革命ではないかと思っている」と金融サービス事業への参入意図を説明した。

photo IIJ 代表取締役会長 CEO 鈴木幸一氏

 また鈴木氏は「安全性と信頼性の高いプラットフォームを作るのと同時に、決済や通貨をデジタル化したい。いずれは“エンコイン”と呼べるようなデジタル金融が目の前に来る。この分野で日本のデジタル化は後れを取っており、それに対し一緒に事業を進めていただける方々と事業を進め、後押しする推進力になりたい」と抱負を語った。

photo 新たな金融サービス事業の特徴
photo ディーカレットの出資会社一覧。資本金は52.3億円で、IIJの持ち分比率は約35%だ

 ディーカレットの代表取締役社長に就任した、IIJ 専務執行役員 時田一広氏は、「日本は現金が使いやすいのでキャッシュレス比率が諸外国に比べて低く、デジタル化が進んでいない。IIJでは、インターネットで培ってきた技術基盤を活用し、通貨取引のシステムもここ10年ぐらい継続的に取り組んできた。そのシステムや資産を活用し、デジタル通貨取引のスタンダードとなるプラットフォームサービス事業に取り組む。ビジョンは『現金を使わない生活を、ふつうに』で、デジタル通貨によって日本のキャッシュレス化を推進する」と事業概要を述べた。

photo ディーカレット 代表取締役社長(IIJ 専務執行役員)の時田一広氏

 「具体的なサービスは、2018年10月から11月を目標にデジタル通貨交換機能や取引機能、利用するためのウォレット、送金機能をリリース予定だ。次に送金機能を拡張することで、決済機能が拡充していくと考えている。その後は、外部サービスとの連携強化、店舗やECでの展開を想定している。ブロックチェーンを使った新決済プラットフォームや、特定業界でのサプライチェーンなども5年以内をメドに展開したい」(時田氏)

photo 提供サービスのロードマップ

 時田氏は「安全で信頼性のあるサービスを提供する。金融サービスそのものなので、国内の金融機関と同等なセキュリティを実装する予定だ。まずは国内での展開となるが、グローバルも視野に入れている。ビジネスモデルは細かいところを調整している段階だが、一般的な加盟店手数料などは想定していない。現金に近い処理での決済を想定しているが、システム利用料といった形での徴収を考えている」と見通しを語った。

photo 2022年度までに売上100億円、会員や利用者数は500万人を超えるのが当面の目標だ

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