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» 2018年03月06日 12時40分 公開

「天才を殺す凡人」から考える 大企業でイノベーションが起きないメカニズム (3/3)

[北野唯我,ITmedia]
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世界の崩壊を防ぐ「3人のアンバサダー」

 コミュニケーションの断絶を防ぐ際に、活躍する人間がいる。

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 まず、「エリートスーパーマン」と呼ばれる人種は、「高い創造性と、論理性」を兼ね備えている。だが、共感性はほんの少しもない。分かりやすいアナロジーでいうと、投資銀行にいるような人だ。

 次に「最強の実行者」と呼ばれる人は、何をやってもうまくいく、「極めて要領の良い」人物だ。彼らは、ただ単にロジックを押し付けるだけではなく、人の気持ちも理解できる。結果的に、一番多くの人の気持ちを動かすことができ、会社ではエースと呼ばれている(そして、一番モテる)。

 最後に「病める天才」は、一発屋のクリエイターが分かりやすい。高いクリエイティビティーを持ちつつも、共感性も持っているため、凡人の気持ちも分かる。優しさもある。よって、爆発的なヒットを生み出せる。ただし、「再現性」がないためムラも激しい。結果的に、自殺したり病んだりすることが多い。

 まず、世界が崩壊していないのは、この「3人のアンバサダー」によるところが多い。

天才を救うのは「共感の神」

 先日、「とある超大企業の人」と議論したとき、面白い気付きがあった。

 それは、大企業がイノベーションを起こすために必要なのは「若くて才能のある人と、根回しおじさんだ」という話だった。これを「天才と、根回しおじさん理論」と呼びたい。

 言わずもがなだが、大企業のほとんどは「根回し」が極めて重要だ。新しいことを手掛けるには、さまざまな部署に根回しをしなければならない。しかし、天才は「創造性」はあるものの、「再現性」や「共感性」は低いため、普通の人々を説得できない。骨も折れる。だから、天才がそれを実現するために必要なのは、「若くて才能のある人物を、裏側でサポートする人物」なのだ。つまり「根回しおじさん」と呼ばれる人たちである。

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 私は、これと全く同じことを考えていた。というのも、凡人と呼ばれる人の中には、「あまりに共感性が高くて、誰が天才かを見極める人」がいるのだ。それを「共感の神」と呼んでいる。

 共感の神は、人間関係の機敏な動きに気が付く。結果的に、人間の関係図から「誰が天才で、誰が秀才か」を見極め、天才の考えを理解することができる。イメージでいうと、“太宰治の心中に巻き込まれた女”が分かりやすい。

 多くの天才は、理解されないがゆえに死を選ぶ。しかし、この「共感の神」によって理解され、支えられ、なんとか世の中に居続けられる。共感の神は、人間関係の天才であるため、天才をサポートすることができる。

 これが、人間関係の力学からみた「世界が進化していくメカニズム」なのだ。

 天才は、共感の神によって支えられ、創作活動ができる。そして、天才が生み出したものは、エリートスーパーマンと秀才によって「再現性」をもたらされ、最強の実行者を通じて、人々に「共感」されていく。こうやって世界は進んでいく。これが人間力学からみた「世界が進化するメカニズム」だ。

この記事は北野唯我氏のブログ『週報』より転載、編集しています。


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