米大統領選でのトランプ陣営のCAによる違法キャンペーン、英メディアの覆面取材で明らかに

Facebookユーザー5000万人の個人情報を不正に入手して2016年の米大統領選でトランプ氏当選のために利用したとみられるデータ解析企業Cambridge Analytica(CA)を覆面取材してきた英Channel 4 Newが、CEOが選挙活動について語る動画を公開した。

» 2018年03月21日 16時00分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 2016年の米大統領選でトランプ陣営のキャンペーンを担っていたデータ解析企業Cambridge Analytica(CA)は、選挙法に違反する可能性が高い活動を行っていた──。英公共テレビ局Channel Four TelevisionのオンラインメディアChannel 4 Newsが3月20日(現地時間)、4カ月にわたる覆面取材の結果に基づいてそう報じた。同メディアはCAのアレクサンダー・ニックスCEOがキャンペーンについて語る場面を含む動画もYouTubeで公開した(記事末に転載)。

 ca 1

 スリランカでの選挙出馬を検討中の資産家を装ったChannnel 4のレポーターがCAに接触し、隠し持ったカメラでニックス氏と同社幹部のマーク・ターンブル氏、主任データサイエンティストのアレックス・テイラー博士がこのレポーターにトランプ氏のキャンペーンについて説明する様子を数回にわたって撮影した。

 ニックス氏らは、このキャンペーンでデータを駆使して3つの州で効果的な僅差での勝利を獲得したことや、対立候補(ヒラリー・クリントン氏)のネガティブキャンペーンをどう展開したかについて説明した。ターンブル氏は、ネットやSNSでネガティブな情報を拡散する方法について「既存の市民団体などが飛びつきそうなネタを与え、適宜追加情報を投入してそれが拡散していくのをみていればいい。情報のソースは不明なので、追跡不能だ」とし、3000万人以上の有権者が視聴したクリントン氏に関するネガティブキャンペーン「Defeat Crooked Hillary」ブランドもCAが製作したと語った。

 ca 3 「Defeat Crooked Hillary」のFacebookページ

 米国の選挙法では、公式の選挙運動と外部団体との調整は違法とされている。

 ニックス氏はまた、情報交換には“自爆式メール”を使っており、送受信したメールは2時間で自動消滅するため「証拠は何も残らない」と語った。

 この記事と動画が掲載された後、CAはニックスCEOを停職処分にし、テイラー氏をCEO代理に指名したと発表した。同社は勅選弁護士、ジュリアン・マリン氏に調査を依頼したことも発表した。

 ca 2 左から、アレクサンダー・ニックス氏、アレックス・テイラー氏

 CAはChannel 4に対し、「不正行為はなかった」と主張し、ロシアによる選挙介入への関与も否定した。

 CAについては、研究者がアプリを通じて入手した5000万人分のFacebookユーザーの個人情報を購入して選挙キャンペーンに利用したと報じられている。Facebookに対し、上院議員やニューヨーク州など複数の週司法長官らがこの件について説明するよう要請している。

 Facebookは19日、CAが今も個人情報を保持しているかどうか調査すると発表した。本稿執筆現在、マーク・ザッカーバーグCEOおよびシェリル・サンドバーグCOOからは特に発表はない。


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