ゴリラはドラミングをして、互いの種を攻撃しあうことを避けるのと同様に、真に賢い人間は、無駄な敵は作らない――。そこに、多くの経営者が持つ魅力の証しがあるのではないか。
この記事は、「『天才を殺す凡人』から考える 大企業でイノベーションが起きないメカニズム」の著者、北野唯我氏のブログ『週報』より転載、編集しています。
孫子いわく「戦わずして勝つ」が最強だが、これは生物界でも同じだ。
例えばゴリラはドラミングをして、互いの種を攻撃しあうことを避ける。なぜなら、攻撃しあうことは、結果、「種としての生存確率を下げること」が明白だからだ。同様に、真に賢い人間こそ、無駄な敵は作らない。優秀な経営者がその典型例だ。
だとしたら本質的に考えるべき問題は、「戦わずに勝つ状況を、どう作るのか?」である。
先日、ある方と話した。同年代の中では抜群に頭のキレる人物である彼と盛り上がった話がある。要約するとそれは
ということだった。
これについての説明は、以下の議論を見てほしい。これは、楽天の創業メンバーで、現在教育現場にいる本城慎之介氏への取材だ。
北野: 僕が実務家として思うのは、ビジネスに成功している人ってどこかのタイミングで、教育に興味をもつ人が多いですよね。その理由って多分、「教育」って、短期的なROI(※)が非常に低くて、それでいて長期的には、ものすごくROIが高いからだと思うんですよ。合理的で、成功した人は、短期的なリターンを求める必要がないから、教育に興味が行く。こういう構造な気がします。本城さんはなぜだと思いますか?
(※)ROI…「Return On Investment」投資利益率。投資額とそれが生む利益との比率。投資効率の指標の1つ。
本城: 教育って、ある意味、みんなプロなんですよね。みんな、かなりの時間教育の受け手になっている。言いたいことも山ほどある。よく「1万時間やると何でもプロになる」というと思うんですけど、みんな小中の授業時間だけで1万時間超えているから、自分でやりたがるし、言いたがる人が多い。
あとは経営者の方たちというのは、人のことで苦労することが多いですよね。後継者とか組織とか……。そうすると、社員教育というよりは、その手前にある学校教育にも意識が向くのではないでしょうか。時間がかかるし、難しいし、手間がかかるというのは魅力的に映ると思います。
そう! これなのだ。つまり、教育は短期的にはROIが非常に低く、長期的に見ると非常に高い行為の1つ。だから、成功した人ほどここにたどり着きやすい。
加えて、前述の頭のキレる人物は面白い考察をしていた。いわく、
あるいは別の話もある。
先日、ビズリーチの役員・関哲氏と話した際も、同様の話題で盛り上がった。彼は、エンジニアからマッキンゼーに移り、起業を経てビズリーチの役員に就任するという、まぶしくて目を向けられないぐらいのキャリアを持つ優秀な人だった。
その際に、盛り上がったのは「最も重要なのは、エグゼキューション(実行)である」ということだった。僕も一応、新卒からかれこれ7年近く経営戦略に携わる仕事を担当してきて、この点を実感している。
なぜなら
だって、簡単にパクれる
からだ。
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