Microsoftの年次イベント「de:code 2018」に、東京大学で「魅力工学」を研究する山崎氏が登場。人工知能を使い、言語化しにくい魅力を数値化し、それを強化していくのだという。その研究分野はデザインや女性の「顔」の魅力にまで及ぶ。
人工知能が女性の顔の“魅力度”を判定し、最も魅力が高まるような化粧を推薦してくれる――そんな研究が東京大学で行われているのをご存じだろうか。
2018年5月に開催されたMicrosoftの年次イベント「de:code 2018」では、東京大学で研究を進める山崎俊彦准教授が、研究内容を紹介するセッションを行い、「魅力」という言語化しにくい“感覚”を数値化する挑戦について語った。
山崎氏の研究室では、映像や写真といったマルチメディアデータに人工知能を用い「心に刺さる」「映える」といった魅力を定量化し、その要因を解析したり、増強したりする方法を研究しており、この研究分野を「魅力工学」と名付けている。
セッションでは、研究室で女性の顔の“魅力度”を予測する人工知能を開発したことを紹介。さまざまな人に多くの顔画像を見てもらい、それぞれの魅力度を1点から5点で評価してもらった数値を教師データとしており、実際に人間の評価と比べても、非常に強い相関が見られた(相関係数0.85程度)という。
「女性の顔については、古今東西、大体同じ評価尺度が存在することが、心理学の分野で判明している。一方、男性の顔の魅力については、複数の評価尺度があるといわれている。現段階では、数値化の精度を高めるのは難しい」(山崎氏)
この研究は、魅力度を予測するだけでは終わらない。その後、彼女らの“すっぴん”の画像も登録し、「画像に多少のフィルタをかけるだけで、魅力度を最大にする」という問題を人工知能に解かせる。これによって、自身の魅力が最大になる化粧の方向性が分かるというわけだ。
実際に「本人が化粧をした顔」と「AIが提案した“化粧”を施した顔」の両者を並べ、人間に比べてもらったところ、AIが考えた化粧の方がいいと答える人が多かったという。
AIが魅力を判定するのは「顔」だけではない。プレゼンテーション用のスライドの出来栄えについても教えてくれる。顔の魅力度を予測するAIと同じく、大量のスライドおよび人間による評価を教師データとし、デザインの良さを点数化する人工知能を開発したのだ。
山崎氏は「AIにスライド作成を支援してもらうことで、スライドの魅力が高まらないか」と考え、生まれて初めてPowerPointを触ったという主婦に、Wikipediaにあるアルベルト・アインシュタインの項目を1枚のスライドにまとめてもらうという実験を実施した。
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