働き方改革は、経営層の固定観念を壊す「攻城戦」 君たちはその「参謀」になれエバンジェリスト澤氏が伝える「意識改革」(2/4 ページ)

» 2018年06月08日 09時30分 公開
[柴田克己ITmedia]

「無用なルールを見つけて壊す」ことから改革は始まる

 固定観念に挑む戦いは攻城戦――。澤氏は参謀が行うべき戦いを「城攻め」に見立てる。

 最初に行うべきは、必然性というロジックで“外堀”を埋めることだ。なぜ生産性を向上させなければいけないのか。そのために、なぜ働き方を改革しなければならないのか。これらの根拠を示し、説得することから戦いは始まる。

 日本の労働生産性は先進国の中でも、飛び抜けて低い。日本生産性本部の調査では、先進7カ国(G7)中で22年連続で最下位であるというデータもある。「こういった結果から、日本企業は生産性向上が急務だと説明できる」と澤氏は強調した。

photo 日本生産性本部の「労働生産性の国際比較」

 生産性向上を阻む主な要因は「無用なルール」だ。例えば、毎日決められたオフィスに定時に出社する、あるいは、残業を認めないといった会社のルールは、本当に価値を生んでいるのかと問い直してみることが重要だという。

 「定時に社員を一斉に退社させ、執務室への立ち入りを禁じるようなルールを作ったとしても、仕事の量が減っていなければ、会社周辺の飲食店で残業をする社員が増えるだけ。こうした状況は、生産性を上げないどころかセキュリティリスクになり得る。

 そのリスクを避けるために『モバイルPCの持ち出し禁止』といったくだらないルールが作られるかもしれない。そうするとさらに生産性が下がるので、社員は“抜け道”を探し始め、リスクはより大きくなっていくのです」(澤氏)

 「日本企業においては、会議の生産性も大きな課題だ」と澤氏は指摘する。当たり前のように行われている定例会議の数々は、本当に価値があるのか。

 澤氏はとある米国の製造業における、会議におけるスケジュール調整にかかるコストの試算結果を紹介した。それによれば、社長を交えた1回の会議体を招集するために使われたスケジュール調整および、事前の資料準備や会議に費やされる時間はトータルで「約30万時間」、金額に換算すると「約34億円」に上ることが分かったという。もちろん、これは企業規模にもよる話だが、会議のコストを考えるには良い指標になる。

 こうした数字を利用しながら、ルールを変えていくことの必然性を訴え、同時に既存のルールから価値を生まないものをピックアップし、壊していくことが必要だという。

 「既にあるルールを見直し、不要なものを見つけて壊していくことが生産性向上を実現するための第一歩。そのために、参謀はIT部門だけでなく、社内のさまざまな人に話を聞きながら、彼らを巻き込んでいかなければなりません」(澤氏)

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