必要なのは地方分権ではなく「標準化」、これからの行政に求められるITインフラ施策とは総務大臣政務官/内閣府大臣政務官・小林史明氏(2/3 ページ)

» 2018年09月28日 09時00分 公開
[西坂真人ITmedia]

ITmedia 東広島市のWebサイトでは「東広島市道路情報(Googleマップ版)」というリンクを設置。これを開くとWebブラウザやアプリでGoogleマップが開き、通行止め、片側通行といった情報が地図に重ねて表示された。

小林史明氏 そう、これはとてもよい取り組みだった。Googleマップ上でオリジナルの地図が作れる「マイマップ」機能を使ったものだが、これも事前に防災協定を結んで何かあれば地図サービス事業者へすぐに情報を提供する仕組みができていれば、マイマップではなくGoogleマップそのものに反映することも可能で、ユーザーにとってもより利便性の高いものとなる。

ITmedia 豪雨災害では河川の情報にも注目が集まったが、道路と同様に河川の情報もバラバラで一元化が求められている。インターネット上での情報提供がこれだけ一般化している中、道路や河川の情報一元化は可能か?

小林史明氏 道路や河川は、国、都道府県、市町村それぞれで管理者の区分けがあるため、自分たちが管理しているものの情報だけを提供するということになっており、これが情報を分かりにくくしている一番の原因。ユーザー視点になっていない。

 解決策は大きく2つある。1つは管理の管轄を乗り越えて全国統一で災害時の道路・河川情報を一元的に提供するシステムを国が構築し、各自治体はそのシステムへ各地の詳細情報を載せていくことでユーザーは1つのサイトで集約して見ることができる。アクセス集中を見据えた基盤設計によってWebサーバがダウンするといったことも起こらない。

 もう一つはオープンデータという取り組み。2016年12月に公布・施行された「官民データ活用推進基本法」によって国および地方公共団体はオープンデータに取り組むことが義務付けられた。これは行政が持っている情報をなるべく民間に提供して民間側で活用してもらおうというもの。例えばGoogleマップやYahoo!地図など地図サービス事業者に情報を提供するのもオープンデータに当たる。ユーザーとしては普段使い慣れている地図サービスで確認できた方がいいはずなので、こちらの方が使いやすいかもしれない。

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インフラ不備で損なわれるボランティア機運

ITmedia 行方不明だった2歳児を見つけ出した男性が、災害救援活動をずっと続けていたということも話題となり、いまボランティアへの関心が高まっている。だがそのボランティアへの対応でも、自治体ごとに方法がバラバラといった課題が指摘されている。

小林史明氏 地方自治体でボランティアの窓口となっているのは社会福祉協議会(社協)で、自治体ごとに社協が存在する。全国社会福祉協議会という中央組織はあるものの、自治体ごとに社協がそれぞれ展開しているため、フォーマットも共通化されていないことが多い。例えば、ボランティアの受け入れで事前受付方式のところもあれば、当日現場で受付を行うところもある。それぞれメリットがあるのだと思うが、いずれにしても統一されていないのでボランティア志願者は戸惑うことも多い。

photo 西日本豪雨の際には、小林氏自身も地元の社協に登録してボランティアに参加したという。「社協の人たちはものすごくいい人ばかり。ボランティアにきた人をいかに気持ちよく対応して、再度ボランティアにきてもらうかと工夫している。アプリケーションレイヤーの人がものすごく頑張っているのに、インフラが整備されていないというのはすごく残念」(小林氏)

小林史明氏 事前登録は電話やファックスのみとか、当日受付のみなのに定員になったら帰されてしまうとか、インフラが不便なことによってせっかく高まったボランティアの機運が損なわれるのは非常に残念。ボランティアというのは、自分の時間を割いてやるものなので、貢献したいという思いや善意を遮る壁があるのはとてももったいない。デジタル社会やITインフラというのはそういう壁を取り除けるものだと思っている。

ITmedia ITインフラが整うことでボランティアのあり方や意識も変わる?

小林史明氏 例えば全国共通のボランティア管理システムを構築し、スマホの簡単な操作で気軽にボランティアの受付ができたり、自分の近くでボランティア募集があればプッシュ通知で知らせてくれるような仕組み(アプリケーション)があってもいい。今いる場所で「こんなボランティアがある」という情報が自動で届くのは、デジタルならではのもの。しかもスマホひとつで簡単に意思表示や受付登録ができ、空いた時間を有効活用できるというのは、理想的なテクノロジー社会のあり方。

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