日本公庫は、「これから会社を起こしたい」「新しい製品、サービスを開発、提供したい」といった、新たに創業する企業や創業間もない企業、新事業を計画している企業を支援してくれるサービスも手厚い。
具体的には、「創業支援」「新事業育成支援」の2つの支援メニューが用意されている。
創業支援は、これから創業を考えている人を対象に、創業前から創業後に至る活動を支援してくれるもの。創業に向けてのアドバイスや情報提供から、創業計画書の作り方や創業時に利用できる融資制度の紹介、創業後の販路開拓などに利用できるビジネスマッチングなどのサービスや経営に役立つ情報までを提供してくれる。
創業に関する情報収拾や相談は、中小企業診断士などの専門の相談員が予約制で約1時間じっくりと相談に乗ってくれる。同Webサイトに記載の「創業ホットライン」で受け付けている。土日も創業相談ができるということで、ビジネスパーソンや主婦など、平日に時間を取れない人にも便利だ。
「亀田製菓」「京セラ」「ビックカメラ」といった名だたる企業も、かつての創業時には、日本公庫の前身である中小企業金融公庫の資金援助を利用したとのこと(創業支援した企業については「日本政策金融公庫の創業支援」公演資料に記載あり)。
ちなみに、創業支援の平成28年度(2016年度)の融資実績は、2万8392先(前年度比107%)、2055億円(前年度比107%)で、性別、年齢別の動向としては、女性、若者への融資が増加しているという。
なお、創業計画書は、融資を受ける際に必要な書類で、必要額、理由、返済への展望などを記載する。数千万から億円という金額がこの書類で動くわけなので、いい加減には書けない。そんな初めての難所も、日本公庫がサポートしてくれるのは心強い。下図のような各業種の記載例も用意してくれている。
また、日本公庫の支援を得て創業した企業の事例も多数紹介されている。かなりの事例が掲載されており、いろいろな業種の“創業”をシミュレーションできそうだ。創業者たちが、何にフォーカスしてビジネスを加速させたのかを見てみるのも勉強になるだろう。
新事業育成支援は、ベンチャーや中小企業が、新たなステージを目指すときなどに応援してもらえる支援だ。「高い成長性が見込まれる新たな事業に取り組む中小・ベンチャー企業」を支援する融資制度という位置付けになっている。
融資額は、新たな事業を行うために必要な設備資金と長期運転資金として、6億円。設備資金は20年以内(うち据え置き期間5年以内)、運転資金は7年以内(うち据え置き期間2年以内)が返済期間となっている。
事業化後7年以内の中小・ベンチャーで、
高い成長性が見込まれる新たな事業を行う人・企業が対象で、次の1〜3の全てに当てはまる必要がある点は注意されたい。
参考までに、新事業育成支援の平成28年度(2016年度)の融資実績は、1641先(前年度比155%)、996億円(前年度比208%)で、中小・ベンチャー企業における新事業への挑戦意欲の高まりが見られたという。
「新事業育成資金」の融資を得た事例から、ここ1、2年でのIT系企業の事例をいくつか紹介しよう。
[平成30年(2018年)1月: 設備資金として、1000万円を融資]
メール、電話、チャット、Twitterなどの各種問い合わせチャネルを一元管理し、顧客問い合わせ対応業務を効率化するクラウドサービス「Re:lation(リレーション)」を開発。チームでのナレッジ共有などにより、生産性向上やスピーディーな顧客対応が可能になり、「対応漏れ」や「二重返信」といったトラブルを解消につながるという。導入企業の増加が期待されることから、事業拡大に必要な設備資金を供給。
[平成29年(2017年)11月: 資本性ローンとして、5000万円を融資]
スマートフォンを中心にコンテンツ制作やトータルプロモーションの企画、制作、販売をワンストップで提供する同社は、ブランド認知、興味喚起、比較検討、購買促進までの流れ全てに対応でき、スマートフォン広告にありがちな短期的な“刈取り”ではない、長期的な関係構築が可能なサービスを提供。財務体質の強化を図るために資本性資金を無担保・無保証で供給。
[平成29年(2017年)6月: 運転資金として、1億円を融資]
スマートデバイス用統合管理プラットフォーム「CLOMO」を開発・提供する同社は、スマートデバイス管理サービス「CLOMO MDM」とスマートデバイス向けアプリサービス「CLOMO SECURED APPs」が主軸事業。iOS、Android、Windows、KindleのマルチOSをリモートで一括管理できる点が特徴で、導入企業の増加が期待されることから、事業拡大に必要な運転資金を供給。
[平成29年(2017年)9月: 運転資金として、4000万円を融資]
カスタムオーダーファッションレーベル「LaFabric」を展開。自社デザイン・開発により流通コストを最小限に抑え、消費者に直接届ける手法「オンラインSPA」を採用し、適正価格の高品質なオーダースーツ・シャツを提供。オーダー初回は実店舗で採寸し、2着目以降はスマホでもオーダーが可能。「買い物に行く時間がない」「納得のいくスーツ・シャツがない」といったビジネスパーソンのニーズに応えている。事業拡大に必要な長期運転資金を供給。
これらの他にも、「ニュース・刊行物等(新事業育成支援関連)」に多くの事例が紹介されている。「うちの会社も当てはまる!」という事例も見つかるかもしれない。
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