プラットフォーマーとして、IoTで何かやりたい人の「触媒」になりたい――ソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏長谷川秀樹のIT酒場放浪記(4/4 ページ)

» 2018年09月30日 07時00分 公開
[やつづかえりITmedia]
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IoTが普通になった世界とは?

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長谷川: インターネットが爆発的にみんなのものになったのって、ソフトバンクが「Yahoo!BB」を配りまくって「つなぎ放題」って言った、あれがきっかけだったと思うんですよね。IoTの世界の中で、「もうIoTなんて、普通じゃん」という時代が来るとしたら、何がどうなったらそうなるんでしょうね?

玉川: いくつかの視点がありますよね。IT業界の視点でいうと、成功者が出たら「IoTはバズワードじゃなかったね」となるかもしれません。クラウドは、SalesforceとかAWSが出たから、もう誰もバズワードとは言わないですよね。

 一方、一般のコンシューマーからすると、IoTが成功した状態というのは「インテル入ってる」じゃないですけど、下にするっと分からないように入っていて、なんかちょっと世の中がよくなっているっていう、そういうレベルかなと。IoTなんて言葉が一般化する必要はなくて、それでいいと思ってるんですけど。

長谷川: 確かに、玉川さんが「SORACOM Inside」みたいな無駄なCM打つようになったら完全に一般化してますよね。お金が余りまくってるからそんなCM打ってるけど、誰も「どうでもえぇ」と思ってるような、そんなんなったら完全に一般化していると(笑)。

玉川: (笑)

 僕はそういうニッチなところでじわじわ喜べるので、例えばドローンがすごく使われるようになった時に、「実は全てのドローンにソラコム入ってる」とかなったらうれしい、みたいな感覚はありますね。

長谷川: 2015年の9月に「SORACOM」をリリースされて、手応えはどうですか?

玉川: かなりいい感じで、お客さまも4カ月で1500を超えて、どんどん増えている状況です。お客さまとパートナーさまに感謝です。

長谷川: AWSの時と違って、IoTの場合は、今までいなかったプレイヤーを入れる必要があるのかな、と思うんです。

 AWSって、インフラとして、それまでだったらレンタルサーバとか、今までもあったものの延長線上ですよね。ソラコムの場合、想像もしなかったものをつなげることができるので、AWSのエヴァンジェリストとしてやっていたことにプラスアルファのパワーが働かないとググッといかないような気がするんですよね。

 これまでやっていたことのコストが安くなる、じゃあそっちにいこうかな、という話ではなくて、アドオンになりますよね。今まで払ってなかった通信費を誰かが払うという。それでも新しい価値が生まれるからいいじゃん、となるには、新規事業プロデューサーか何か分からないですけど、そういう人がいないと、何をしたらいいか分からないという会社も多いんじゃないですかね。

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玉川: それは間違いなくあります。

 AWSのときって、実物の見せるものがなかったんですよ。クラウドだから見せられるのはユーザーインタフェースくらいで、「あとはやってみてください」と。

 ソラコムは、SIM(「Air SIM」)というモノがあるので、そこは妙な安心感があるんですね(笑)。

 一方、AWSのときになかった要素として、SIMを挿すデバイスが必要なんです。そこは世界が広がったと感じていて、AWSのときにお付き合いがあった会社さんはシステムインテグレーターさんとかSaaSとかのテクノロジーソリューションを出しているような会社さんだったんですけど、それ以外にデバイスを作っているモニターとかセンサーとかカメラのモノ作りプレイヤーが出てきて、そことつながるようになったのが、面白いですね。

 クラウドプレイヤーさんとデバイスプレイヤーさんとを引き合わせると、すごく面白いことが起きるので、それはすごく楽しいチャレンジで、新しい世界が見えるなと。僕らは「コネクテッド」といって、デバイスとインターネットをつないでいるんですけど、ある意味、違う業界の人と人ともつないでいるんですよね。

 一方、マーケットの観点でいうと、クラウドとIoTで考え方は大きくは変わっていないんですよ。クラウドの時は、データセンターというビジネスがあって、一方で新しくインターネットビジネスをやりたいとか、Web系のオープンなシステムを作りたいという需要が生まれたんです。

 同様にソラコムも、建機をつなげるとか、インフラをつなげるとか、業務用タブレットをつなげるというようなM2M(Machine to Machine)という市場はすでにあって、これはこれでそれなりに大きい市場なんですね。

 一方で、IoT的な新しい世界、つまりクラウドとつながって、機械学習やらAIやら可視化みたいなことが融合してものすごく便利になるという世界も、両方あるんです。僕らはバランスよく、両方とっていくということを考えてます。

長谷川: なるほどね。僕も楽しみなのは、IoTもいろいろある中で、どのプロダクトがドーンといくのかなというところですよね。

玉川: 読めないですよね。AWSも蓋を開けてみたら、ゲームがドーンといったり、メディアがドーンといったり、それからSAPなどのエンタープライズon AWSがでてきたりと、いろんな使い方が出てきたので、それはプラットフォームビジネスの特徴かなと思います。

 僕らのお客さんの事例も、除雪機から、ガイガーカウンターから、訪日旅行者向けSIMから、すごくバラエティがあって。結局それって、お客さんが握っているので、われわれが意図的にやろうとしても分からないところですよね。「これだ!」というものが出てきたら、フォローをしっかりするということで。

長谷川: そうですよね。

玉川: 長谷川さんがやってくれた店舗システムの有線ネットワークのバックアップのユースケースも、評判いいんですよね。「それでいいじゃん」ということで、何個かもうバックアップに使うという案件が決まってますよ。

長谷川: どうみてもバックアップは無線の方が、冗長性を考えてもいいですからね。

玉川: ある意味、狭義のIoTと広義のIoTがあると思っていて。僕らは通信プラットフォームなので、「IoT感」みたいのがすごくなくても全然ウエルカムなんです。バックアップもIoT感はないですけど、通信プラットフォームとしてはすごくよい使い方なので、それも全然いいと思っています。

長谷川: ホームセキュリティとか車っていうのは、今みんな注目してますけど、どのIoTがくるのか楽しみですね。

玉川: ええ、どんな世界になっちゃうのか、本当に楽しみですね。

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ハンズラボ CEO 長谷川秀樹氏プロフィール

1994年、アクセンチュア株式会社に入社後、国内外の小売業の業務改革、コスト削減、マーケティング支援などに従事。2008年、株式会社東急ハンズに入社後、情報システム部門、物流部門、通販事業の責任者として改革を実施。デジタルマーケティング領域では、Twitter、Facebook、コレカモネットなどソーシャルメディアを推進。その後、オムニチャネル推進の責任者となり、東急ハンズアプリでは、次世代のお買い物体験への変革を推進している。2011年、同社、執行役員に昇進。2013年、ハンズラボを立ち上げ、代表取締役社長に就任。(東急ハンズの執行役員と兼任AWSの企業向けユーザー会(E-JAWS)のコミッティーメンバーでもある。


取材・執筆:やつづかえり

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