クラウドコストの適正化には、ソフトウェア資産管理のベストプラクティスが有効だ。しかし、事業部門による資産管理には限界がある。そこで重要度が増す要素とは?
前編(Computer Weekly日本語版 10月3日号掲載)では、IT部門を通さず部門単位でクラウドを導入した際に生じるデメリットを紹介した。
後編では、クラウドコストを節約するためのテクニックの数々を紹介する。
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ウィット氏は次のように話す。「ベンダーの中には、最少ユーザー数や想定される最少拡張数を確約させるところもある。Salesforceの契約はこのような仕組みになっていることが多い」
「事前購入したものを全て導入するのに大体6カ月かかるとする。だが目的が変わり、製品を当初の想定通りには使用しないとなると、3年間の契約に縛られることになる」
大手ソフトウェアプロバイダーはユーザーをクラウドサブスクリプションに移行させようとしているが、既存の企業契約にどの程度クラウドが含まれているのか正確に確認する価値があるとウィット氏は話す。小規模プロバイダーの場合は重複の可能性があり、ユーザーは二重支払いに陥る。
「重要なのは、クラウドがどのベンダーにとっても戦略的な意味で優先順位が高いことだ。それを強みとして利用し、重複を制限するような契約を調達部門に組み立てさせて、まだ導入していないサブスクリプションに支払うことがないようにする」
また、同氏は次のように補足する。「オンプレミスの企業契約にはクラウドへの移行プログラムが含まれていることが多い。例えばMicrosoftの『Enterprise Agreement』(EA)は確実にそのような仕組みになっている」
「クラウドの契約を結ぶ場合、オンプレミスライセンスにおいて未使用のソフトウェアアシュアランス保守プログラムがあればクレジットを受け取れることが多い。また有効な保守契約(『Windows Server』や『SQL Server』など)があれば、クラウドの導入権には何らかの永続ライセンスが付属している」
同氏は、サブスクリプション契約の1年目に割引するという「下取りサービス」をベンダーが実施しているケースも知っているという。「EU諸国であれば、中古ソフトウェア市場で永続ライセンスを再販するという選択肢もある」
このようにクラウドサービスとSaaSの本質は、ビジネスユーザーがIT部門の束縛なくじかにサブスクリプションを購入してクラウドリソースを使用できるところにある。このため、IT部門はIT資産の使用状況を一目で確認することができないとウィット氏は話す。
「月単位で課金される場合、特定の製品やサービスを引き続き使用しているか、その製品を何人のユーザーがどのくらい長く使用しているかを知るのは難しい」(ウィット氏)
どのクラウドプロバイダーも、自社のサービスの使用状況を表示する独自の管理ポータルを所有しているが、同氏は「どのベンダーを使用しているのかがはっきりしたとしても、毎月こうした情報を全て手動で追跡するのは不可能だ」と話す。
Forresterが2018年5月に発行したレポート「Cloud Cost Monitoring And Optimization, Q2 2018」(クラウドコストの監視と最適化、2018年第2四半期)によると、インフラにかかるコストを削減したり、新規投資にかかる高額な初期費用を回避したりすることを目的としてクラウドを検討する企業は多い。だがその実現は厳しいという。
レポートの執筆者である同社のプリンシパルアナリスト、ローレン・ネルソン氏は「成功するか否かは、ワークロードの本質よりもクラウド管理とガバナンスの成熟度に懸かってっている」と記述している。「導入数、ユーザー数、アカウント数、インスタンスの種類が増えるにつれ、コストは今後も複雑さを増していく。このためITプロフェッショナルは、可視性、一貫性、スケーラビリティの高い管理作業を実現しようとしてツールに頼ることが多くなる」(ネルソン氏)
Forresterは、クラウドリソースに対しソフトウェア資産管理のような機能を提供するソフトウェアツールのカテゴリーがあると記しており、そのベンダーとしてApptio、CloudHealth Technologies、Densify、RightScale、Turbonomicなどを挙げている。
ネルソン氏によると、こうしたツールの主な機能は、クラウドプラットフォーム全体におけるコストとユーザーの力学をより明確に可視化するという。同氏はレポートに次のように記している。「管理作業が成熟していけば、この情報はガバナンスと自動化のプログラムにおいて欠かせない要素になる。ガバナンスと自動化の両方にとって、データの可用性が一貫していることが非常に重要になるためだ」
Computer Weeklyが話を聞いた専門家の意見から明らかなのは、ソフトウェア資産管理のベストプラクティスをIaaS、PaaS、SaaSやその他のクラウドリソースに適用して、使用しているクラウドサービスとその目的をIT部門が理解できるようにしなければならないことだ。
独自にSaaSを調達している部門に、そのような製品やサービスを管理するスキルがあるとは限らない。そのため、ここにIT部門が管理で介入するチャンスが生まれるとウィット氏は話す。「IT部門がビジネスに再び関与するためには、ビジネスに必要なサービスを提供しなければならない。このためには、IT部門が従来の役割にとらわれず、予算編成、コンプライアンス、サプライヤー管理にも仕事の幅を広げる必要がある」
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