デジタル変革時代のインフラ設計は“これまでの常識が通用しない” ガートナーが説く「クラウド時代のインフラ投資」Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2018年11月19日 13時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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「M2」クラウドでユーザーがなすべきこととは

 M1とM2は、システムのありようも大きく異なる。それを示したのが、図3である。亦賀氏によると、これまでのM1は、オンプレミスの場合だとサーバやストレージ、ネッワークを調達し、概要設計、詳細設計を行ってシステム構築に1年をかけ、5年で更改するといったものだ。このシステムをクラウド化するというのが、M1の領域である。

Photo 図3 M1とM2のシステムのありようの違い(出典:ガートナー ジャパンの資料)

 これに対し、図3で「New World」と記されているM2は、サービス部品の集合体であるクラウドを前提として、クラウドプロバイダーが新しいサービスを開発して提供するほか、それぞれの使い方に対してマネージドサービスを施すといったものである。

 さらに、M2では例えば、「10分で数千台のサーバのプロビジョニング(準備・用意)」や「1日に数百のサービスの提供」といった動きが可能になるなど、M1とはスピード感が違うと指摘している。

 同氏はこうしたM1とM2のクラウド形態について、M1におけるクラウドとは「仮想ホスティングサービス」、M2におけるクラウドとは「数千のサービス部品の集合体」と表現した。

 そして、M2においてユーザーがなすべきことは「部品の理解と目利き」、そのうえで「ビジネスをドライブする“回路図”の設計、実装、運用」だと語った。回路図という言葉を使ったのは、M2のクラウド上での「システムの構築・運用」を「回路の設計と駆動」になぞらえたものである。さらにこの話で非常に重要なのは、こうした一連の作業を「自分でやる」ということである。

 最後に、M1とM2における今後のクラウド戦略立案の例を示したのが、図4である。図中にM1とM2と同列で「運転」とあるが、これがまさしく「自分でやる」ためのステップである。この図を示しながら、亦賀氏は次のように語った。

Photo 図4 今後のクラウド戦略立案の例(出典:ガートナー ジャパンの資料)

 「クラウドはオプションではなくマストになる。クラウドへのシフトはITの歴史的な転換点で、この動きは単なるトレンドではない。従って、もう逆戻りしない。前に進むしかない。とりわけ、ビジネスの競争力に直結するデジタル化に向けては、M2によるインフラづくりを急ぐべきだ。今後はM2を前提に、次世代クラウド戦略を立案していただきたい」

 冒頭のメッセージはこの発言から抜粋したものである。同氏の見解に続いて、筆者も一言。クラウドがさまざまな形態で活用されつつある中で、「本来のクラウドメリットを最大限生かす」という意識が少々薄れてきているように感じている。どちらかというとM1の話だが、ハイブリッド利用という“妥協案”で、メリットの追求に甘さはないか。これはベンダーに問いただすのではなく、ユーザーがいま一度自らを厳しく見つめ直していただきたい。

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