機械学習を駆使して「健康診断を受けない人」を減らす方法(2/2 ページ)

» 2018年12月25日 08時00分 公開
[高木理紗ITmedia]
前のページへ 1|2       
photo

 受診データの分布から、「前年に受診した人は、再び受診する可能性が高い」という傾向をつかんだ2人は、予測の対象者を「新たに健診対象になった人」「前年に受診した人」「前年に受診していないが、過去に受診したことのある人」「前年を含めて、過去に1回も受診していない人」の4グループに分類し、「年齢」「性別」「同じ世帯に他の受診者がいるかどうか」「問診の結果」といった条件で予測を行った。

 2人は今回の予測に対して、条件によって段階的にデータを分けていき、決定木で予測モデルを構築した。正確な受診率は明かせないものの、今回の予測の結果を基に受信勧奨のハガキを送ったところ、新たに健診対象になった人の受診率は過去の1.25倍、過去に受診した人のそれは過去の1.5倍に上がったという。

photo

 「今回の課題は、直近の受診率をどう高めるか、というものでした。しかし、この先にもっと大きなテーマがあると考えています。例えば、受診への意識を改善することで健康寿命を延ばし、自治体の医療費を抑えるといったものですね。そうなると、今度は健康を損なう可能性の高い人に、優先的に受診を促すような仕組みが必要になるかもしれません。将来的に、こうしたシナリオを統合的に最適化できるプラットフォームがDataRobotにできればいいと考えています」(森川さん)

分析エンジンの進化は、人の仕事をどう変えていくのか

photo 凸版印刷 データマーケティングチームの山本一係長

 今回の分析予測に使われたのが、機械学習エンジン「DataRobot」だ。トッパンは、2017年の夏に全社でDataRobotを導入。その活用先の一つとして、デジタルマーケティング部門に白羽の矢が立っていた。

 従来の分析は、データを取得してから用途に合わせて加工し、データ同士の関係性や整合性をチェックしてから基礎分析を行い、さらに詳細な分析を行う、という長いプロセスをたどっていた。DataRobotを導入したことで、そのプロセスは大きく変わったという。

 「例えば、データを学習し、目的に合った分析モデルを作る段階では、DataRobotがデータを分割して自動的に検証し、かつ複数の手法を一気に試してくれます。分析モデルを選ぶ際も、モデルの適合度を一覧で可視化してくれますし、どの特徴量の影響が大きいかをグラフで示してくれる。こうした点に衝撃を受けましたね」(山本さん)

photo

 統計手法について詳しく知らなくても使える分析ツールの存在は、「アナリストの統計スキルに依存しなくなる」という意味では大きな進歩だ、と2人は話す。しかし、だからといって、データ分析の現場から人の仕事がなくなることはないという。

 「DataRobotの場合、自分が知らなかった分析手法を次々と出してくるので、使っていて自分の存在意義に悩んだこともありました。しかし、ツールに任せられるところは任せればいいと思いますし、データの加工や有効な分析モデルの考案など、『どのデータがあれば何が分かるかを考える』『どうやってデータを使いこなすかを考える』といった部分は、引き続き人間の仕事になるのだと思います。その意味で、アナリストの仕事はもっと創造的になっていくのではないでしょうか」(山本さん)

 「私たちの顧客は、データを分析して出た予測結果を仮説とは見ていません。あくまで、『この施策をやったら、一体何が起こるか』という現実的な将来のビジョンを求めています。さまざまなモデルを自動的に検証し、どのモデルをなぜ適切と判断したのか、といったプロセスを分かりやすく示せるツールを使うことで、顧客への説明も強化できますし、その将来の成果にコミットできると考えています」(森川さん)

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ