新型店舗は、まさしくコンビニの進化に向けたセブン-イレブンのチャレンジの1つだが、同社と同社の持ち株会社であるセブン&アイ・ホールディングスは、最近、ネット上でも新たな取り組みに挑んでいる。
筆者がそれを知ったのは、セールスフォース・ドットコムが12月5日に東京・有明の東京ビッグサイトで開催した年次イベント「Salesforce World Tour Tokyo」の基調講演で、同社の小出伸一 代表取締役会長兼社長が同社サービスの活用事例として、次のように紹介していたからだ。
「セブン‐イレブンは全世界に店舗を展開し、(セブン&アイグループとして)1日に2200万人のお客さまに利用されている。これまではその2200万人に向けて、徹底した商品管理を行うことでカスタマーエクスペリエンスを提供してきたが、この夏、個々のお客さまにもっと便利なサービスを利用していただけるように、スマートフォン向けのアプリを配信した。これによって、一人一人のお客さまと密接につながることができるようになる」
そのうえで、こんな見解を示した。
「その狙いをキャッチフレーズで言うと、これまでは“近くて便利”だったセブン‐イレブンが、これからは“私に便利”になるわけだ。これまでの商品管理に加えてきめ細かいCRM(顧客情報管理)を行うことで、一人一人のお客さまに対して、できる限りのカスタマーエクスペリエンスを提供していこうというものだ」
ちなみに、セブン&アイ・ホールディングスはセブン‐イレブンをはじめとしたグループのオムニチャネル戦略の基盤として、2017年9月にセールスフォースのCRMサービスを採用した。今回の「セブン-イレブン公式アプリ」などの配信は、その延長線上にある取り組みのようだ。
セブン&アイ・ホールディングスとして、この取り組みについて自ら公表はしていないが、セールスフォースの事例紹介の動画サイトで、セブン&アイの後藤克弘 代表取締役副社長が次のように語っている。
「スマートデバイスが普及し、進化してきた中で、お客さまと一対一の関係をどうつくり上げていくか。CRMをしっかりと活用していかないと、これから先の事業展開を描けないと考えている。今回のアプリ配信で、個々のお客さまをもっとよく知りたい。そして個々のお客さまにとって“私にとって近くて便利”という世界をつくっていきたい」
「近くて便利」から「私に便利」へ――。これは前半で紹介した顔認証採用の省人型コンビニにも当てはまる。この進化こそが、セブン‐イレブンが挑むデジタル変革であるという印象を強く持った。
さらに言えば、コンビニだけでなく、多くの業種のデジタル変革に共通するものがあるのではないか。ちなみに、セブン‐イレブンは「近くて便利」というコンセプトがあったから「私に便利」というフレーズが出てきた。
果たして、あなたの会社は顧客から見て、“どんな存在でありたい”のか。それを誰もが分かる言葉にすることから始めてみてはいかがだろうか。それがデジタル変革の根本にあるべきだと考える。
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