どうやら“AWSの背中が見えてきた”Microsoftは、クラウドの覇権をAWSから奪取すべく、本気モードになったのかもしれません。Azureのシェア拡大についての日本マイクロソフト 平野社長の言葉に、その意気込みを探ってみます。
この記事は大越章司氏のブログ「Mostly Harmless」より転載、編集しています。
Microsoftの業績が好調です。
ロイターのサイトでは厳しい評価ですが、前四半期(98%増)より下がったとはいえ、76%という数字は好調といってあげないとかわいそうでしょう。唯一、Windows OEMの売り上げが減少しているということですが、それは織り込み済みでしょう。クラウドの伸びがそれを上回ったわけですから、Windowsからクラウドに舵を切ったナデラCEOの戦略が奏功したということではないでしょうか。もはやMicrosoftはOSの会社ではないのです。
同じ時期のAWSの伸びが47%ということですから、着実に差を縮めていることになります。まだ差は大きいですが、このまま差が縮んでいけば、数年で追い付くと考える人もいます。
一方で、ちょっと驚きの記事を見つけました。
『「Windows Server 2008」のサポート終了に伴い、そのクラウド移行先として優位に立っていたAmazon Web Services(AWS)に対し、Microsoft Azureがこの1年で逆転して引き離していることが分かった』のだそうです。
それはそれで、「Microsoftにとってはめでたいことだろうなぁ」と思ったのですが、「あれっ?」と思ったのは、その理由について日本マイクロソフトの平野拓也代表取締役社長が、
「最大の要因は3年間の延長セキュリティ更新プログラムだ」
と言っていることです。
これはサポート終了後もセキュリティ更新プログラムの提供を3年間継続するもので、Azure上であれば無償提供、その他の環境に対しては有償提供となる。
のだそうです。
「ええー!? そんなことしていいの?」とも思ったのですが、していけない理由もないのか? 自社製品なんだし、自社サービスへの誘導に割引を適用するだけの話ですから。まあ、販売台数に応じてライセンス価格を変えるとか、サポート費用を割り引くとかいうことは既に行っていたでしょうし、これもそれと同じことなのかもしれませんね。
しかし、Windows Server 2008というニッチな範囲とはいえ、OSというと、これまでは公共財に近い扱いで、平等性みたいなものが求められていた部分もあったと思いますし、Microsoftもそういうことは自重していたのではないでしょうか。
これは、Windowsの重要性が相対的に下がったということなのかもしれません。
選択肢がWindowsしかないという、公共財的な立場を維持していたら、このような「不公平な」値付けを行えば、世間からの批判が高まったでしょうし、独禁法の観点から横やりが入ったかもしれません。
今はLinuxなどの台頭により、Windowsは「One of them」となったために、自由な競争に打って出られるということなのかもしれませんね。
そして、そこまでしてでもAmazonから顧客を取り戻すことにしたということは、Microsoftがクラウドの覇権をAWSから奪取すべく、本気モードになった、ということなのでしょう。AWSの背中が見えてきたタイミングで、ナデラCEOによるクラウドシフト戦略の総仕上げの時期に入ったといえます。2019年は、Microsoftのクラウド分野での攻勢が強まりそうですね。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.