クラウドストレージサービスが企業ITの新たなプラットフォームへと進化しつつある。このサービスの2大ベンダーであるBox JapanとDropbox Japanが相次いで明らかにした事業戦略から、その進化の行方を探ってみたい。
ファイルの同期や共有を行うクラウドストレージサービスの2大専業ベンダーであるBox JapanとDropbox Japanが先頃、相次いで事業戦略と新サービスについて記者説明会を開いた。両社の会見で筆者が特に興味深く感じたのは、クラウドストレージサービスの進化についてだ。両社それぞれの事業への姿勢とともにIT産業の構造変化にもつながり得るこの話を中心に、以下にそれぞれの取り組みを紹介しよう。
まず、Box Japanが新サービスとして発表した、クラウドストレージサービス「Box」の機能をユーザー企業が開発したアプリケーションに組み込めるようにする「Box Platform」については発表資料をご覧いただくとして、同社の古市克典社長が会見で語った進化の話は次の通りだ。
Boxは現在、グローバルで9万2000社、日本国内で4200社を超える企業に利用されているが、「ここにきて目前に巨大な市場が広がってきた」という。それは、これまで多くの企業がオンプレミスで構築し利用してきたECM(エンタープライズコンテンツマネジメント)を、3社に1社がクラウドに移行しようとしているとの内部調査結果を得たからだ。
目前に広がってきた巨大な市場というのは、ECMがクラウドに移行した「CCM」(クラウドコンテンツマネジメント)である。図1がその動きを端的に描いたものである。その上で同氏は、「Boxはこの巨大なCCM市場を創造していきたい」と語った。
さらに、Boxが実現するデジタル変革のステップとして示したのが、図2である。すなわち、クラウドストレージサービスは当初、個人の生産性向上のためのツールとして利用され、現在はチームのコラボレーションツールとして浸透しつつある。そして、今後はビジネスプロセスを効率化・自動化する「コラボラティブビジネスプロセス」、最終的にはデジタルパワーを社内にフルに取り込む「インテリジェントエンタープライズ」を実現するという内容を示したものだ。
そのステップにおいて、同氏が強調したのは、図3に示すような幅広いパートナー企業との連携だ。この図で注目されるのは、最下段にあるファイルの同期・共有からCCMへと向かう「緑の帯」、これこそがBoxである。これは何を意味するか。まさしく「企業におけるデジタル変革のプラットフォーム」とも受け取れる構図である。
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